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民主主義の守り方

危機にある民主主義をどう守る? 宇野重規東大教授に歴史的、思想的な背景と今後の可能性などについて聞きました。

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民主主義の守り方

民主主義「執行権」の再検討を 宇野重規・東大教授が語る改革案

東京大の宇野重規教授=横浜市青葉区で2021年1月30日、玉城達郎撮影
東京大の宇野重規教授=横浜市青葉区で2021年1月30日、玉城達郎撮影

 危機的状況と指摘される民主主義のあり方について、政治思想史が専門の宇野重規東京大教授に聞くインタビューシリーズの2回目。日本国内に目を転じれば、昨秋、宇野教授を含む6人の学者が、菅義偉首相によって日本学術会議の新会員任命を拒否され、学問の自由に関わる議論を呼んだ。一方で、若者の政治への関心低下も指摘されて久しい。日本でも民主主義は岐路に立たされているのか。国内の状況について聞いた。【聞き手・鈴木英生】

若者は「政治に関心がない」のか?

 --地方のまちづくり関係者が、「学術会議の問題を周りの人に『自分事』としてわかってもらうのが難しい」と話していました。最近は、地域の活性化など社会的な課題に意欲的な人たちでさえ、政治への関心が高いとは言いがたいようです。

 ◆今の、特に若い人たちには、社会に関心を持つことと、いわゆる政治に関わることの間に大きな距離がありますね。私も、島根県海士町や岩手県釜石市などの地域おこしやNPO、ソーシャルビジネスの現場にうかがい、人々がじっくり話し合って課題を解決するさまを見てきました。でも、彼らに「市や町の議員になったら?」と話すと、「絶対にやりたくない」と言われる。

 本当は、政治や民主主義は誰にでも身近なものです。政治とは、人と一緒にいるということ。民主主義とは、自分たちのことを自分たちで決めること。小は学校のクラスから大は人類全体まで、開かれた場で議論をしてものごとを決める。地域おこしの例などは、まさに民主主義です。

 私の新刊「民主主義とは何か」は、古代ギリシャの直接民主制を強調して、私たちが民主主義と聞いてまず連想する、選挙で議員を選ぶような代表制民主主義とは別ものとして扱いました。古代ギリシャの市民は、自分たちが大事だと思うことを自分たちで議論し、場合によっては自分が公職に就くかもしれない緊張感を持っていました。だからこそ、納得感や達成感、責任感を持ちやすかった。「投票したら後はお任せ」になりがちな代表制民主主義で、同じ感覚を持つのは難しい。

 若い世代が政治を遠く感じるのは、…

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