冬の欧州、2歳児とのながーく、疲れる日々 おもちゃとネット動画に救われ
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平塚雄太/西部報道部記者
仙台市出身の35歳。外国語に堪能で同い年の妻は2歳の息子を連れて仕事でスイスに赴任。一人、日本に残された。ならばパパは育休で行きます! 料理の盛り付けはぐちゃぐちゃ。掃除や洗濯も得意ではない。物価高のスイスで慣れない主夫業をこなせるか。新型コロナウイルスにも翻弄(ほんろう)される不器用な新米パパの異国でのドタバタ劇を随時更新します。
光よ、とにかく暗い冬
スイスのジュネーブは北緯46度で北海道の稚内市よりも北に位置する。2020年に日本から来たばかりの7月は午後9時を過ぎても空が明るく、その時間でも小学生ぐらいの子供たちが家の前の公園で遊んでいるのを見て驚いた。夏至の日没時間は午後9時半ごろで、サマータイムで1時間時計が進んでいることを考えてもだいぶ遅い。
当然その分、冬は暗い時間が長くなる。12月の朝は午前8時にようやく空が白み始め、午後5時にはもう真っ暗だ。私は大学進学で仙台市から札幌市に移り住み、北海道は一年の日の長短の差が激しいと思ったが、そのさらに上を行く。パリやロンドンなど欧州の主要都市はもっと北にあり、北欧に留学経験のある妻は「スウェーデンの冬は昼が来たと思ったら夕方になる」と笑う。北欧は家具やインテリアが有名だが、暗く長い冬を楽しむために発展したものなのだろう。
冬は公園で遊ぶ子供たちの姿もめっきり減り、夏の「夜遊び」もこの冬の暗さを見ると仕方がないと思えてくる。特に子供は日照不足で骨の形成に必要なビタミンDが不足しがちになるそうだ。我が家の2歳の息子にも毎朝、液体のビタミンDを飲ませているが、こちらではどこの家庭でもそうしているらしい。
学校の地理で習う通り、欧州は海流や偏西風のおかげで緯度が高くても温暖だ。ジュネーブも緯度の割に札幌市よりもだいぶ暖かい。内陸にあるので乾燥しているが、近郊の山はいつも雪化粧をしていて時々街中も雪が降る。私は札幌を出て就職してから静岡、東京、福岡と比較的日本の温暖な地域の勤務が続いていたため、雪を頂く山々を眺められる冬はうれしい。
「ケータイ、オーボワ!」
保育園が終わる平日の午後2時半から夕食までの約3時間は、私が一人で2歳の息子の面倒を見ることになっている。冬の暗さと寒さに加え、新型コロナウイルスの感染拡大や息子のイヤイヤ期もあり、外出しにくくなった。そうなると、どう家の中で過ごすかが大事になってくるが、これがなかなか難しい。
思い出すのが、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった20年4月に福岡市の公園で取材した小学校低学年の子供を持つお母さんのことだ。緊急事態宣言で学校は休みになり、外出自粛が呼びかけられて2週間がたった頃だった。子供の外遊びは歓迎されない時期だったが、公園で子供を遊ばせていたお母さんは嘆いた。「頑張ってきたけれど、家の中は工作であふれてもう限界」
あの頃はフムフムと聞いていただけだったが、今ならばあのお母さんの気持ちがよくわかる。我が家の2歳児は小学校低学年の子供より静かではあるが、家の中で長時間過ごすのは一苦労だ。子供は基本的に自分にかまってほしいし、常に何かをしたがっている欲求とパワーを秘めている一方で、飽きやすい。一人遊びに夢中だと思って私が料理をしようとすると、駆け寄ってきて「パパこっち」と手をぐいぐい引っ張ってくる。気持ちはうれしいが、ずっとかまってはいられない。
ましてや息子と遊んでいる時、気になることを検索しようと思ってスマートフォンをいじるとこれがいけない。「ケータイ、オーボワ!ケータイ、オーボワ!」と息子が…
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