みなさまごきげんよう。
 フェルディナント・ヤマグチでございます。

 先週の記事で既報の通り、トヨタ・豊田章男社長スーパーインタビューが遂に実現いたしました。

 ご尽力、またご協力頂いた関係各位に深く感謝いたします。ありがとうございました。

 いつもであればここからヨタに入るところなのですが、頭の固い編集担当者から「読者の皆さんが心待ちにしていたトヨタの社長インタビューです。今回はヨタは勘弁してくださいよ」と泣きつかれ…。ということで、全国1億2000万人のヨタファンの皆さんには大変申し訳ありませんが、早速インタビュー記事に突入いたします。

 豊田章男氏が目の前に座っている。

 連結売上高28兆4000億円の巨大企業の社長が。
 経常利益が3兆円に迫らんとする“あの”トヨタのトップが。
 年間1000万台以上も販売する、名実ともに“世界一”の自動車会社の総帥が。
 静かに微笑み、私の目の前に座っている。

 プリウスPHEVの試乗会に予告なし登板で突然現れた豊田社長。偶然近くにいた人間に声がかかり、緊急の囲み取材が行われた。

 ここで逢うたが百年目。この機を逃したら次はいつお目に掛かれるかも分からない。短い囲み取材の後、私はシツコク広報担当者に食い下がり、単独インタビューに成功したのである。

 広報部メディアリレーション室長の藤井英樹さんから、「社長。こちらが“あの”フェルディナントさんです」と紹介される。

 “あの”って何スか藤井さん。

 一瞬の間が有り、「ああ、あなたが“あの”フェルディナントさん(笑)」と豊田社長が返す。

 何で“あの”で通るんスか豊田社長。

 とはいえ「フェルディナント・ヤマグチ」の名前は天下の大社長にも認識して頂いているようだ。ありがたや。早速お話を伺おう。

 先にも述べたが、単独インタビューは囲み取材の後に、やや強行突破気味に行われた。

 本来であれば時系列に沿って囲みの話から書くべきなのだろうが、質問者が複数であったため、どうしても話の内容は薄くなってしまう。

 貴重な豊田章男社長のインタビューだ。読者諸兄にはコッテリ濃い部分からご堪能頂こう。ショートケーキのイチゴは最初から食べたほうが美味しいのだ。

「『あいつはいったい何をやってるんだ』って」

「レースへの参加に対しては、はじめは批判の声ばかりでした。社内からも社外からも」
「レースへの参加に対しては、はじめは批判の声ばかりでした。社内からも社外からも」

F:お忙しいところ本当に申し訳ございません。時間が限られているので、単刀直入に伺います。

 取材を通して感じているのですが、ここ数年でトヨタは大きく変わったという印象を受けています。86の多田さんもそうですし、MIRAIの田中さんも、こちらにいらっしゃるプリウスの豊島さんもそう。みなさん良い意味でハジケていらっしゃるし、全体的に風通しが良い。広報の方も以前よりずっと自由にやっている感じがします。

 これがいつ頃からかと振り返ってみると、豊田さんが社長に就任されてからのことなのです。大型タンカーの様に巨大なトヨタが方向転換を図るのは容易なことでは無いと思います。どのようにして変えてこられたのでしょうか。どのように舵を切られたのか、具体的に教えて下さい。

豊田社長(以下、豊):この短い時間で、厳しい質問ですね(笑)。ひとつはまず、私自身が「命を賭けてクルマに乗っている」ということでしょうね。

F:それは、レース活動に積極的に参加されている、という意味で。

:ええ。レースに参加しているという意味で。私はもともと文系の学部を卒業しているので、エンジニアではありません。エンジニアと話すためには、何らかの“ツール”が必要であると考えました。ツールが欲しかったから、徹底的にドライビングスキルを磨いて、ニュルブルクリンク24時間レースなどへも挑戦しました。

 そうした活動も、はじめは批判の声ばかりでした。「あいつはいったい何をやってるんだ」って。

F:それは社内からの声ですか。

:両方です。会社の中からも外からも批判されました。しかしこれだけ大きな会社を短期間で、しかも確実にシフトチェンジするには、社員全員がクルマに興味を持って仕事をしてもらうようにするにはどうしたら良いか……。ただ利益を上げるためだけの会社ではなく、本当に良いクルマ作る会社にドンと変えるために私自身ができる方法は、これしか無かったと思います。

 私自身がハンドルを握って身体を張って積極的に走っていく。自分自身が鋭敏なセンサーになる。そのセンサーを武器に、商品会議を進めてきた、ということがまず1つです。

F:社長自身がセンサーになる。なるほど。

“卓袱台返し”が始まった

「私の場合、『これは面白くないんじゃない?』と言って最後の段階でひっくり返してしまう」
「私の場合、『これは面白くないんじゃない?』と言って最後の段階でひっくり返してしまう」

:それともうひとつ。これは前に彼(同席しているプリウス開発責任者の豊島さん)とも話していたのですが、社長室の意味が変わってきた。これも大きいと思います。

F:社長室の意味。それは部署としての社長室ですか。

:部署としてではなく、本当の部屋としての意味。私がいる部屋の社長室です。その意味を変えてきました。

 今までの社長室は、最終決裁の場だったんです。社長室に来るときには、もう既に物事が殆ど決まっていた。例えば何かの書類があるとします。上の方にはもういろんな人の印が押してある。そして最終の一番左に「豊田社長」と書いてある。そこに私が最後のハンコをポンと押したらゴーだったんです。

F:そこまで来て、社長のご判断で「俺は押さんぞ」なんてことは、もう殆どあり得ない状態だった。

:そうですね。そう思います。以前は「この人がハンコを押してるから大丈夫だな」、なんて感じで決裁していたとか、そんな話も聞いていました(笑)。

F:官僚化ですね。組織が大きくなると、どうしてもそのように官僚化してしまう。

:そう。ところが私の場合は、「これは面白くないんじゃない?」と言って最後の段階でひっくり返してしまう。それこそ商品化決定会議でもひっくり返してしまう。私が社長に就任してから、社長室での「ひっくり返し」が始まったんです。もちろんそれにより、社内で多少の混乱があったとは思いますが。

F:そりゃ大混乱でしょう。社長印を頂くためだけの最終会議の筈が、まさかの卓袱台返し。星一徹じゃあるまいし(笑)

:それはそうなんですが、社長室は最終決裁の場ではないだろうと。ただ決裁をもらいに来る場所ではなくて、社長と相談するための場所だろうと。

F:社長、ハンコをお願いしますではなく、社長、どうしましょうと。

:そう。どうしましょうと。例えばトヨタには労使懇談会というのがあります。今までは社長として話す内容の挨拶文という物が既に書かれていて、「はい、これでお願いします」という風に上がってきていた。自分の文章ではなく、人が書いた文章です。その了解を社長に取るという流れです。

 ところが私が、「労使懇談会でそういうことを言いたいんじゃないよ」、とグズグズ言い出すようになった(笑)

F:グズグズ……(笑)

出た!労使懇談会。MIRAIのチーフエンジニア田中さんの組合時代の話もそうだったが、この会社の偉い人は、平気でこうしたセンシティブな話に踏み込んで行く。お話を伺う方がドキドキしてしまう。

社長室が「決裁」の場から「相談」の場に

「決裁ではなく相談だよと言い始めた瞬間に、この辺の人たちが直接社長室に来るようになった」(写真右はプリウス開発責任者の豊島さん)
「決裁ではなく相談だよと言い始めた瞬間に、この辺の人たちが直接社長室に来るようになった」(写真右はプリウス開発責任者の豊島さん)

:それで何が変わったかというと、今まではそれぞれの部署の肩書の高い人が私に了解を取りに来ていたんですね。例えば私にだったら、副社長とか専務とか、そういう人です。書類を持って、「社長。これお願いします」と。

F:どうしても仕組み上そうなりますよね。

:そう。「決裁」ならば仕組み上そうならざるを得ない。でも「相談」ならどうでしょう。相談だよと言い始めた瞬間に、この辺の人が直接社長室に来るようになった。

豊田社長は傍らに座るプリウスの豊島さんの肩をポンポンと叩いて、「なあ」と言った。
豊島さんは至極当然という風に元気よく「ハイ」と答える。

F:それで良いんですか。何というか、職位とか序列とか、会社にはそういうものが有るじゃないですか。特にトヨタのような大きな組織には。

:良いんじゃないですか。どんどんやって良いですよ。さっきの労使懇談会にしたって、実際に挨拶文を書いている人間が来るんですよ。書いている人が直接来る。そのほうがずっと良いじゃないですか。

F:確かに効率は良いのですが、その間の部長さんとか本部長さんとか、自分をすっ飛ばされて不快に思う人も出てくるのではないでしょうか。

:その辺が面白く無い人は居るでしょう。そうしたが方がスピーディーで上手くいく場合も有るし、そうで無い場合もある。多少時間は掛かりましたが、それでもやはり社長室が「決裁」の場から「相談」の場に変わったことは大きかった。

F:決裁から相談の場へ。なるほど。

「止めるのが私の仕事」

:公聴会の事を覚えていますか。

F:公聴会……あの、米国議会での公聴会ですか……?

:そうです。あの公聴会。

これまたセンシティブな話になって来た。
豊田社長はインタビューの途中で、突然2010年2月24日の米下院監視・政府改革委員会に於けるリコール問題に関する公聴会のことを話題に出した。「全てのトヨタ車には、私の名前が付いている」と述べ、居並ぶ下院議員諸侯の前で腹を括って見せた、あの公聴会だ。

:あの時にはっきりさせたことが有ります。私の役割は何なのか。社長にはどんな役割があるのか。たったの二つです。ひとつ目は「最終的に誰も決められないことを決めること」。そしてもう一つが、「その責任をとること」です。

F:誰も決められないことを決める。そしてその決めたことの責任を取る。

:そう。それがリーダーの役割です。そして「誰も決められないこと」とは、得てして「やめる」ことです。何かをやろうとすること、何かを始めることは、放っておいても誰かが決めて行くものなのです。

 しかし長年やってきたこと、続けてきた何かをやめる決断をする事は誰にも決められません。自分の決定によって、誰かが困ったり傷付いたりする。そういうことを考えると、人は決断できなくなってしまうものなのです。

F:確かにそうですね。人から恨まれたくないですし、止めるのはできれば先延ばしにしたい。

:ええ。それでも止めるのが私の役割です。NUMMI(トヨタとGMが合弁で設立した自動車製造会社)もやめたし、F1もやめた。全て私が社長になってからの決断です。

F:レース好きの社長からすると、F1撤退は正しく断腸の思いだったでしょうね。

:NUMMIだってそうです。何しろ自分のいた会社ですから。ですが会社を生き抜かせるためには止むを得ない決断でした。自分自身が恨まれるとか、自分自身の立場がどうだとかいうことに構っている余裕もなかったのだと思いますね。当時は。

F:そういうことを積み重ねてこられて、「トヨタが変わり始めた」と社長ご自身が実感されたのはいつ頃からですか。ああ、何となくトヨタは自分がイメージする会社になってきたな、と思うようになったのはいつ頃からですか。

:いや、それは今でも別に実感はしていないですけどね(笑)

F:そうですか(笑)

 と、ここまで来てボチボチ会社に行く時間……という言い訳は今回通用しませんね(笑)

 これからロスに移動しますので、そろそろ切り上げないと飛行機の時間に間に合わないのです。何しろアメリカの荷物検査はやたらと時間が掛かりますからね。早めに空港に行かないと。

 今週は速いペースで連続でお届けしようと思います。
 それではみなさまごきげんよう。

「正直に言うと、ほんとどこまでやるのって…。」

こんにちは、ADフジノです

ついに念願かなって、豊田社長のインタビューが実現できました。このような怪しげなコラムが正面きって取材の場を得られるはずもなく、いろいろとあれこれ手をつくし、尽力くださったトヨタ広報部の皆様にこの場を借りて御礼もうしあげます。

ところで、数週間前のあとがきで、日本市場にディーゼル車が増え始めている現状について書いたところ、「欧州ではディーゼルによる大気汚染が問題になっているのに、ディーゼル車を勧めて良いのか?」というご意見をいただきました(詳細はこちらから)。

たしかにディーゼル車の割合が5割を超えるというロンドンやパリなどでは、一部車両の通行制限やロードプライシングなどを実施しています。都市部の渋滞緩和や大気汚染の減少が狙いですが、その理由の1つにはディーゼル車を普及させていくなかで、ガソリン車に比べて排ガスの規制が遅れていたという事実がありました。しかし、2000年以降、欧州の排ガス規制は以下のように変遷しています。

(単位:mg/km)
(単位:mg/km)

近年欧州では、ディーゼルの規制が一気に進み、例えばNOx(窒素酸化物)の排出量は15年前のおよそ6分の1にまで規制され、ガソリン車とほぼ同等にまでなっています。日本でも石原都知事時代のディーゼル車の黒鉛、煤に関する問題提起を機に、ディーゼルエンジンはもとより、硫黄分を除去するなど軽油そのもののクリーン化も進み、“クリーンディーゼル”という言葉も生み出されました。

いまや日本のポスト新長期規制は、ある部分ではユーロ6以上に厳しい排ガス規制といいます。したがって、ユーロ4や5までにしか対応していない車両がまだ多く走っている欧州と、現在はポスト新長期をクリアしたディーゼル車のみが販売されている日本とを一緒くたにしてしまうのは、少し事情が異なると思います。

このタイミングでちょうどマツダがアクセラをマイナーチェンジし1.5リッターのディーゼルエンジンを搭載したモデルを設定したというので取材に行ってきました。試乗インプレッションは1.5リッターディーゼルのデミオオーナーであるY田さんの先週のコラムを参考にしていただくとして、マツダのディーゼルエンジン開発のエンジニアにインタビューすることができたので、その模様を少しお届けします。

マイナーチェンジしたアクセラ。フロントやリアバンパーの形状が変更され、モデルチェンジ前よりも洗練された印象に。目力も強くなった
マイナーチェンジしたアクセラ。フロントやリアバンパーの形状が変更され、モデルチェンジ前よりも洗練された印象に。目力も強くなった
エンジン性能開発部主幹の森恒寛さん
エンジン性能開発部主幹の森恒寛さん

ADフジノ(以下、F) 今度のマツダのディーゼルエンジンには「ナチュラル・サウンド・スムーザー」とか「ナチュラル・サウンド・周波数コントロール」とか、あまり聞いたことない技術が取り込まれているようなのですが、そもそもこれは何なのですか?

森さん(以下、森) ディーゼルエンジンはノック音をはじめ音がうるさいという課題がありました。この問題を解消すればディーゼルエンジンの魅力はもっと高まる。でも、1分間に何千回転もまわっているエンジン内部で、何が要因で音が起きているか当初はわかりませんでした

:そりゃエンジン内部は見えませんよね。でも最近はセンサー類が発達しているから簡単に測定できると思いきや

:いえいえ、そうはいきません。たしかにいろいろと計測していく中で要因は、シリンダー内部ではなく、クランクシャフトでもないとか、おおよその想像はついていたんです。でも決定的な証拠が見つけられない

:それがどうして答えに辿りつけたのですか

:われわれの開発チームに、偶然にも計測技術のプロがやってきたんです。どうにかして、音の原因を見つけられないかと唸っていたら「それなら測れると思いますよ」って、本当にできてしまった(笑)。なんとエンジンが稼働状態でパーツの振動や伸縮を計測できる測定装置を作ってしまった。そして、音の原因がピストン付近の共振にあることを突き止めたんです。

ピストンの横にあるのがピストンとコンロッドをつなぐピストンピン。この内部に入っている部品が「ナチュラル・サウンド・スムーザー」。イメージとしては、ピストンピン内部で鳥の羽のように両サイドが上下に揺れて、ピストンの振動をダンパーの振動で打ち消す制振装置の役割を果たす。これにより共振レベルが最も高い3.5kHz付近の振動が、約半分の数値に下がったという。今回のマイナーチェンジで2.2リッターのディーゼルにもこの機構が搭載されている
ピストンの横にあるのがピストンとコンロッドをつなぐピストンピン。この内部に入っている部品が「ナチュラル・サウンド・スムーザー」。イメージとしては、ピストンピン内部で鳥の羽のように両サイドが上下に揺れて、ピストンの振動をダンパーの振動で打ち消す制振装置の役割を果たす。これにより共振レベルが最も高い3.5kHz付近の振動が、約半分の数値に下がったという。今回のマイナーチェンジで2.2リッターのディーゼルにもこの機構が搭載されている

:一方の周波数コントロールとはどういうものなんでしょうか

:ノック音が出ている要因を分析していく中で、例えばピストンやコンロッドが共振しているときに、この力の発生源をコントロールできないかと思ったわけです。ディーゼルエンジンというのは3~4回にわけて燃焼しているので、その1つ目の燃焼と2つ目の燃焼の間隔を広げると、周波数の山とか谷の出方が変化することがわかったんです。この燃焼の特性を1つ1つ紐解いていってちょうどいい場所を探しだしたというわけなんです。

:なんとも気の遠くなるような…。欧州のディーゼル車も最近は静かになってきましたけど、彼らは制振材とか防音材とかでなんとかしている気がします。こういう技術って初めて聞いた気がします

:どちらの技術もマツダが特許を申請しています。

:さすがです。スカイアクティブ以降、マツダってエンジンしかり、Gベクタリングコントロールしかり、既存技術を革新するメーカーって感じですね。ところで、ここで少しディーゼルに関する一般的な話を聞かせてください。いまやマツダは日本を代表するディーゼル乗用車メーカーです。一方でディーゼルに対してネガなイメージを抱いている方も多いと思うので、あらためてその良さを教えていただけると。

:現行のユーロ6やポスト新長期規制というのは、いまやガソリンと同等かそれ以上の厳しい規制になっています。ひと昔まえはたしかに煤の問題などもありましたが、いまやDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)を通り抜けることはありません。それこそガソリンターボ車には、ごくわずかですがまだ煤が出ているものもあります。一方でディーゼル車でマフラーに白いハンカチをかぶせてまったく煤がつかないというデモンストレーションをやりますが、いまのディーゼル車ではそのレベルが当たり前なんです。

:そうなんだ。最新のものはそこまできれいだと。一方でCO2排出の面ではどうなんでしょうか

:CO2は燃焼効率の問題なので、ガソリンと比べてディーゼルのほうが明らかに少ないです。燃費だっていい。日本車では軽油が安いですから経済的なメリットもあります

:例えばDPFの耐用年数はどうなんですか? 10年10万kmくらいは保証されるのでしょうか

:その程度では壊れるようなことはありません。いま細かな数字は手元にありませんが、その倍の20万km以上の走行テストをして性能確認をしています。ちなみに先ほどのナチュラルサウンドスムーザーも、永年保証です

:いま欧州車が尿素SCRやNOx吸蔵還元触媒などを使って、排ガスをクリーンにしている中でマツダだけがデバイスに頼らず圧縮比をさげて規制をクリアしていますが、
今後はどうなっていくのでしょうか

:そうですね、PMには触媒(DPF)を使っていますが、世界一の低圧縮エンジンができたことでデバイスに頼ることなくNOxをクリアすることができました。例えばSCRなどを使うと、それだけで数十万円というコストがかかります。お客様の手元にわたるときにはそれなりの額になってしまう。それでは皆さんに買っていただけないので意味がない。この低圧縮の技術があれば、例えばもっと大排気量でハイパワーなものを作りたいとなっても役に立ちます。そのときにはそういった先の後処置技術の組み合わせも含めて考えていこうと思っています。

:今後はどんどんEV化が進むから、内燃機関の未来は明るくないんじゃないかという声もありますが、それについてはどう思われますか?

:うちは会社の偉い人たちがよくそう言ってますけど(笑)、電池を作ることにだって燃料は必要なわけです。そこからちゃんと効率を比べて見るべきですよねと。もちろん将来的にEVは増えるとは思いますが、でも数年でガラッと変わるものでもなく、内燃機関の効率を高めていくことにだってまだまだ可能性があります。

:確かに人見さん(現常務執行役員、スカイアクティブエンジンの父)もそうおっしゃってました。コロンブスの卵というか、いまのマツダの技術開発には驚かされることが多い。

:いや、ほんといまは、フルモデルチェンジのタイミングで入れるような技術を出し惜しみしないで、できたものはその都度どんどん市場投入しています。正直に言うと、ほんとどこまでやるのって…。

:既存技術の革命児として、今後も大いに期待してます(笑)

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