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 成田国際空港会社(NAA)は2021年4月13日、国際線の搭乗までの手続きを顔認証で通過できる「Face Express(フェイスエクスプレス)」の仕組みを報道陣に公開した。 成田空港では日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)がFace Expressを導入し、第1ターミナル南ウイングと第2ターミナルにおいて同年7月の一般運用開始を目指している。東京国際空港(羽田空港)の国際線ターミナルでは2社に米Delta Air Lines(デルタ航空)を加えた3社が、同じく7月の一般運用開始に向けて準備を進めている。新型コロナウイルス禍で国際線旅行客が激減するさなかではあるが、開催が1年延期された東京五輪の2021年夏開催に間に合わせるのが目的となる。

 Face Expressはチェックイン時に顔情報をパスポートと搭乗券にひも付け、以後は荷物の預け入れや保安検査の入り口、搭乗ゲートまでをパスポートや搭乗券の提示なしでそのまま通過できる。今回のケースでは、以上の4つのチェックポイントを運用するのは空港運営会社の役割だが、出国審査の部分のみ法務省出入国在留管理庁の管轄となるため、Face Expressが利用できない。

 Face Expressの顔認証技術はNECが提供するのに対し、出入国審査についてはパナソニックが提供する顔認証サービスを使用し、パスポートに記録されている顔情報とゲート上のカメラで撮影した本人の顔を照合することで通過できるようになっている。つまり、空港到着から国際線搭乗まで2回だけパスポートを取り出す必要があるが、以後は顔認証のみで通過できるサービスがFace Expressというわけだ。

 Face Expressの仕組みは、国際航空運送協会(IATA)が推進する「One ID」の仕組みにのっとっている。今回は決済と直接関係のない話題となるが、「非接触」「利便性」の2つの側面に着目しつつ、諸外国での「One ID」のコンセプトにのっとった「顔認証搭乗サービス」の現状について紹介したい。

ドイツのフランクフルト国際空港。「I am digital」のキャッチコピーが躍る広告横の航空便案内表示は、昔懐かしの“パタパタ”とフラップ表示が切り替わるアナログ方式のもの
ドイツのフランクフルト国際空港。「I am digital」のキャッチコピーが躍る広告横の航空便案内表示は、昔懐かしの“パタパタ”とフラップ表示が切り替わるアナログ方式のもの
(撮影:鈴木 淳也)
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