アジア系への「憎悪犯罪」、対策強化 米上院が法案可決
【ワシントン=永沢毅】米議会上院は22日、米国で多発しているアジア系住民へのヘイトクライム(憎悪犯罪)防止に向けた法案を超党派の賛成多数で可決した。司法省に司令塔となるポストを設け、各州の警察当局が対策を取りやすくするのが柱。類似の法案を検討している下院でも可決されれば、バイデン大統領の署名を経て成立する。
賛成94、反対1で可決したのは「新型コロナウイルス憎悪犯罪法案」で、日系のヒロノ上院議員(民主党)らが提案した。法案は司法長官に各州や地方の警察当局向けの指針の作成を要請し、オンラインを通じて新型コロナに絡む憎悪犯罪の報告をしやすくしたり、市民向けの啓発運動の拡大に役立てたりする。
憎悪犯罪は実際の発生件数と比べ、当局に報告されている数が少ないとの指摘がある。法案が成立すれば地方の警察当局が憎悪犯罪を把握し、地域のアジア人社会を含めた対策を取りやすくなる効果が見込める。
米カリフォルニア州立大の憎悪・過激主義研究センターの調べでは、2020年に全米の主要16都市でおきた憎悪犯罪は前年から7%減ったが、アジア系に絞ると2.5倍に増えた。新型コロナの発生源を中国と主張したトランプ前大統領が「中国ウイルス」との表現を多用した影響で、米国では中国人らを標的にした暴行事件が続発した。
バイデン大統領は同法案について3月末の声明で米議会に速やかな成立を働きかけていた。
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