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自工会豊田会長、ガソリン車禁止は選択肢狭める-再び政府に苦言

更新日時
  • カーボンニュートラルはガソリン車の販売禁止だけでは達成できず
  • ガソリン車で使用可能なイーフューエルなど次世代燃料に期待感

日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は、温室効果ガス排出量の実質ゼロ(カーボンニュートラル)目標の達成には既存の車両への対応なども必要だとし、菅義偉政権が打ち出したガソリン車の新車販売禁止だけでは達成できないとの考えを示した。

Toyota Management Attend The Tokyo Motor Show

豊田自工会会長

  豊田氏は22日のオンライン会見で、日本におけるハイブリッド車など電動車の割合は新車販売で35%と普及が進む半面、保有ベースでは1割にも満たないと説明。保有期間が長期化する中、保有車に対しても「何かしらの手を打たない限り、国としてのカーボンニュートラルは達成できない」と述べた。

  その上で、二酸化炭素(CO2)と水素の合成液体燃料「イーフューエル」などカーボンニュートラル燃料はガソリン車などで使用できるため、日本の培ってきた技術が活用できると指摘。電気自動車(EV)の充電インフラ整備がされていない地域でもCO2削減が可能だとし、期待感を示した。

  豊田氏は「決してEVの販売促進とか、ガソリン車禁止とか、FCV推進とかそういうことではなくて、カーボンニュートラルがゴール」と強調。「ある内燃機関だけに軸足を置いた規制や法律で出口のところで既存技術を制約して幅を狭めることではなくて、カーボンニュートラルへのあらゆる道、あらゆる選択肢を広げていくことが先ではないか」と語った。

  世界的な脱炭素化の流れが加速する中、菅政権は2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指している。自動車業界にもガソリン車の販売禁止などの方向性が示されているが、豊田氏は自工会会長の立場からエネルギー分野での脱炭素の取り組みなどについて政府に対しこれまでも苦言を呈してきた。

Japan's Diet Reopens as Prime Minister Suga Pledges Carbon Neutral Japan by 2050 in Policy Speech

昨秋カーボンニュートラル政策を打ち出した菅首相

合成燃料の課題はコスト引き下げ

  石油元売り各社や自工会が参加する経済産業省の合成燃料研究会は22日、30年までに高効率で大規模な製造技術を確立し、「40年までの自立商用化を目指すべきである」とする中間取りまとめを発表した。

  今後の大きな課題となるのがコストの引き下げだ。研究会によれば、合成燃料には1リットル当たり約300円から700円の製造コストがかかると試算され、将来的に水素の価格が下がった場合でも約200円だという。

  政府が昨年12月に発表した「グリーン成長戦略」では、50年に合成燃料のコストをガソリン価格以下まで引き下げることを目標に掲げた。経産省によると、19日時点の日本におけるガソリンの店頭価格の全国平均価格は約150円。

  研究会は取りまとめの中で、将来的に合成燃料のコストは脱炭素という環境価値を踏まえる必要があり、「既存燃料と単純な比較をすることは適当ではない」との見方を示した。

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(合成燃料研究会の中間取りまとめについて追記します)
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