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居場所を失った“50代会社員”が、これ以上「孤立」しないために出来ること

2021年04月08日 公開
2022年10月06日 更新

松本利明(人事・戦略コンサルタント/HRストラテジー代表)

松本利明

そろそろ定年退職も見えてくる50代。会社を去ることを惜しまれる人もいれば、「いなくなってせいせいした」と思われてしまう人もいる。「せいせいした」と思われてしまう人は、在職中から孤立しがちなのではないだろうか。

キャリアの仕上げに自立して「孤独」に仕事を楽しむのは良いが、「孤立」は避けたい。周囲と調和を保ちながら働く秘訣を、人事・戦略コンサルタントの松本利明氏に伺った。(取材・構成:林加愛)

※本稿は『THE21』2021年5月号の内容を、一部抜粋・編集したものです。

 

拗ねても、前に出ても周囲にはストレスになる

一般的に「孤独な中高年社員」というと、窓際で空気のような存在になっている人のイメージが強いのではないでしょうか。しかし実際のところ、そのタイプはリストラですでに淘汰済み。今の時代の孤独な中高年は、もう少し「自分を出したい欲」を持っています。

それは裏を返せば、居場所のなさを感じている――存分に活躍できない、存在意義を実感できないといった気持ちを抱えているということです。

「居場所がない」と感じたときの人の行動は、2タイプに分かれます。陰にこもって拗ねた態度をとるか、存在感を出そうと前に出るか。双方とも鬱屈した空気を放出するので、本人ばかりか周囲までもがストレスを感じます。

なお、「前に出るタイプ」はさらに二派に分かれます。一つ目は年下世代にあからさまなマウンティングをするタイプ。「自分は昔、こんなことをやり遂げた」「私の若い頃に比べて、今の若い者は」といったフレーズを頻発するのが特徴です。

もう一方のタイプは、若い世代を立てる態度をとりつつも、結果的に周囲に居心地の悪さを与えるタイプ。「これからは君たちの時代だからね」「大いに応援するよ」「若い人から学びたいと思ってるんだ」などの発言は一見謙虚で親切ですが、言われる側は「放っておいて」と思っている、という構図です。

このタイプは基本的に、悪気はありません。意識の上では本当に応援したいとも思っているはず。しかし無意識で「居場所がない」と認識しているあるため、どこか物欲しげになります。

結果として周囲に敬遠され、「自分はこんなに気を使っているのに」と、ますます孤独感をつのらせる悪循環になります。良かれと思った行動が裏目に出る、悲しいボタンの掛け違いです。

 

バブル末期の手法が職場で浮く原因に

居場所がなくなるということは、その人のスキルが時代に合わなくなってきたということでもあります。

例えば、デジタル化によって職人的なスキルは軒並み不要になりました。POSシステムが普及して、レジの早打ちや瞬時の暗算スキルが要らなくなったのと同様のことが、業界・業種を問わずあらゆる職場で起きています。

時短効率化も、バブル末期に社会人になったこの世代には逆風でしょう。徹夜で仕事をしたことを自慢する文化はとうに消え果て、定時までに2倍の生産性で働くことが良しとされる時代ですが、そんなノウハウは持ち合わせていません。

そして何より、この世代は「先の読めない時代」の仕事の手法を持っていません。バブルの残照があった時期、若手として失敗と成功を繰り返す中で得たのは、「成功を繰り返せばよい」というセオリー。

これは、「新しいインプットがない」ことを意味します。ただ過去の成功パターンを繰り返すだけの人は、今の職場では「浮く」ばかりです。

そうして鬱屈を抱えたまま役職定年を迎えると、ストレスはさらに増大します。

どんな環境でも、与えられた業務に意味を見出すことができればいいのですが、多くの人は、役職定年を境に突然それまでの立場を外され、給与も落ちる現実を受け入れ難く感じ、モチベーションを落としてしまいます。

現在の中高年世代、特に男性は、「会社第一主義」のもとに働いてきた人たちです。そのため、家庭も居場所になりづらいのが困りもの。家の秩序はすでに妻と子供のものになっていて、会社にも活躍の場がない――この八方ふさがり状況、果たして解決策はあるのでしょうか。

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