【動画あり】名古屋入管でスリランカ人女性死亡 政府の法改正案に批判の声「改善でなく焼け太り」

2021年3月27日 10時06分
 名古屋出入国在留管理局に収容されていたスリランカ人女性が6日に死亡した問題で、支援団体などが26日、東京都内で省庁からの公開ヒアリングを開いた。同様の死亡例が相次いでいるため、政府は今国会で入管法を改正する構えだが、支援者らは「入管が管理を強化できる内容で、改正の必要は全くない」と怒りの声を上げている。 (木原育子、望月衣塑子)

収用中に死くなったウィシュマさん、日本で英語の先生になるのが夢だったという。(フェイスブックより)

 「(入管は)苦しむ彼女を見殺しにした。なぜ点滴一つも打たせなかったのか。根本的な考えを変えないと死亡事件が繰り返される」。ヒアリングで、外国人労働者や難民の支援団体「START(スタート)」(名古屋市)顧問の松井保憲さんが声を震わせた。
 女性はラスナヤケ・リヤナゲ・ウィシュマ・サンダマリさん(33)。支援者にはウィシュマさんと呼ばれていた。関係者によると、不法滞在で昨年8月20日から収容。今年1月上旬に食事が食べられなくなるなど体調が悪化し、同28日に吐血した。食道炎の症状が見られ、名古屋入管は外部の病院で内視鏡などの検査を受けさせたが、点滴などは行われなかった。

入管施設で死亡した女性が支援者に送った手紙。日本語や英語で体重が減ったことや食事が取れなくなっている状況を伝えている

 ヒアリングで、出入国在留管理庁警備課の梅原義裕補佐官は「2月下旬に摂食しない旨の報告を受けたが、数日後再開したとの報告が(名古屋入管から)あった」と説明。松井さんは「実際と懸け離れた恣意的な報告だ。合致しない」と憤った。
 石橋通宏参院議員(立民)は、調査のために設置される第三者委員会に外部委員を入れる案について「4月上旬までに提出される報告のために、まだ人選を検討しているのか。(調査した)フリではないのか」と追及。会場から「お墨付きを与えるだけだ」という声が飛んだ。
 近年、他の入管でも収容者の死亡が相次いでいる。長崎県では2019年6月、長期収容に抗議しハンガーストライキ中だったナイジェリア人男性が餓死した。

スリランカ人女性の死亡などを巡って行われた出入国在留管理庁などへのヒアリング=26日、東京・永田町で

 今回の入管法改正案の特徴は、3回以上の難民認定の申請に対しては原則として送還停止を認めない点。現状では却下後も繰り返し申請する人が多く、政府がこれを長期収容の原因とみなしているためだ。だが、改正案は、送還を拒否すれば刑罰が科されるなど強制力が強い。これまでの仮放免制度の代替措置として、支援者らが監理人として見守る監理措置制度を創設することも盛り込んでいる。
 26日には日本外国特派員協会(東京)で記者会見もあり、法改正に詳しい指宿昭一弁護士が「入管が管理を強化できる制度だ。自らの誤った政策で死亡者を出しておきながら、改善ではなく、焼け太りを狙っている。絶対に成立させてはならない」と訴えた。
 支援者らは、ウィシュマさんが昨年8月、同居していたスリランカ人男性から暴行を受けて静岡県警に相談し、入管に収容された経緯も問題視。松井さんは「DV被害から逃れるために入管に入るのを希望した。シェルター施設のようなものだと思っていたようだ。帰国するつもりは全くなかったが、『本国に帰国する』と書かれた用紙にDVから逃れるためにサインをしてしまったと聞いた」と語る。
 DV防止法には「被害者の国籍、障害の有無を問わず人権を尊重し、安全確保と秘密の保持に配慮しなければならない」とある。NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」の山岸素子事務局長は「DV相談をした際、警察署はまずシェルター施設で保護するなどの対応をすべきだったのでは。被害を訴えたら収容されるとなれば、被害者は声を上げづらくなる。問題なかったのか、調査すべきだ」と疑問を投げかける。

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