科学的な考え方でプレゼンや論文に強くなる! なぜ、できるだけ単純に考えるといいのか?

考える、書く、伝える 生きぬくための科学的思考法(4)

又吉直樹さんの教養バラエティ「又吉直樹のヘウレーカ!」でもおなじみ大阪大学の名物教授・仲野徹先生が「プレゼン」や「文章」を見違えるほど伸ばす技術をすべて伝授します。まずはもっとも基本となる、ものごとをシンプルに考える「科学的な考え方」の授業です。>これまでの連載はこちら

科学的な考え方1 正確なデータに基づいて考える

当たり前すぎることですが、正しいデータがなければお話になりません。「前提が偽であればすべて真」というのは論理学の教えるところです。もし、もとのデータが間違えていたなら、どんな結論だって正しくなってしまうのです。

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そして、言葉は正確に使わなければなりません

またカラスかと思われるかもしれませんが、ちょっと白っぽいカラスがいたりします。だから、「『わりと』がつけばカラスも白い」のです。そういったことがあるので、何より重要なのは定量的に考えることです。どんな場合でも数値化できるというわけではありませんが、可能な限りナマの数字で定量的に考えることが大事です。

大学院生がデータをプレゼンするときに、こちらのほうが少し多いです、などという言い方をすることがあります。そういうアホな発言をすると、百パーセントの確率で私から厳しく注意されます。「少し」というのは主観的であって、どの程度のことを言っているのかがわかりません。「だいぶ」も「とても」もそうです。きちんとした数値で表さなければお話にならないのです。

さらに言うと、相対的な数値ではなくて絶対値で考える癖をつけておくことが望ましい。たとえば、10%増えました、といっても、10%から20%に増えたのか、90%が100%になったのかでは解釈がずいぶんと違ってきます。注意が必要なのは、直観的な印象を悪用するために、怪しげな健康食品やニュースで、下図の右端にあるような描き方のグラフが使われるケースがあることです。意図的ではないかもしれませんが、誤解を招きやすい示し方です。しかし、たとえこんなグラフがあっても、ちゃんと絶対値を見る癖をつけておけばだまされることはありません。