「菅首相が反論し、野党が反発」…この新聞見出しに、違和感を覚える理由

報じる側と読者の溝をどう埋めるか?

政治報道の役割は何か。一刻も早く、この先の動きを伝えることか。それとも、市民に判断材料を提供することか。政治報道に携わる者は、この問いを真摯に受け止めてほしい。

政治は津波とは違う。津波が相手であれば、報道の役割は、到来をいち早く察知し、正確な予測を大きく報じることしかできず、津波そのものを押しとどめることはできない。けれども政治報道は違う。間違った方向に政治が向かっているとき、その動きを察知し、報道が警鐘を鳴らすことによって世論が動けば、政治の流れは変えられる。

五輪組織委の人事をどう報じたか?

政治報道と津波の報道の違いをより具体的に考えていただくために、事例を示そう。東京五輪・パラリンピック大会組織委員長の森喜朗会長が辞任の意向を固め、川淵三郎氏を後継指名したことを報じた2月12日。各紙の朝刊の1面記事の見出しはこうだった。

森喜朗元東京五輪・パラリンピック大会組織委員長[Photo by gettyimages]
 
【五輪組織委・森会長辞任へ 「女性蔑視」引責 きょう表明 後任に川淵氏】(毎日新聞)
【森・五輪組織委会長、辞意 女性蔑視発言で引責 相談役で残留へ 川淵氏を後継指名、受諾】(朝日新聞)
【森会長辞任へ 「女性蔑視」発言 引責 後任 川淵氏を指名 五輪組織委】(読売新聞)

実際はどうなったか。森氏は会長を辞任し、相談役としての残留はなかった。川淵氏は会長就任を辞退した。結果的に、毎日新聞と朝日新聞の見出しは「誤報」となった。

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