京都府が品種転換を推進する宇治種の一つ「鳳春」(府提供)

京都府が品種転換を推進する宇治種の一つ「鳳春」(府提供)

 抹茶スイーツの人気もあって茶産地同士の競争が激しさを増す中、京都府は宇治茶のブランド価値向上や市場拡大に向け、新たな策を打ち出している。抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ)の栽培では高級な「宇治種」への転換を促し、来年度から5年間で計100ヘクタールの改植を目指す。新型コロナウイルスの影響で国内の需要が冷え込む中、米国への輸出にも力を入れる構えだ。

 全国の碾茶の生産量は2019年が3464トンで、10年間で2・4倍に増加。鹿児島県や静岡県など元々は煎茶の生産量が多い産地が近年、碾茶にシフトし、特に主流となる中級品種の量が拡大している。府によると、10年前は府内産が全国の半分を占めていたが、現在は4分の1程度までシェアを落とした。府内産の単価は直近5年間で4割ほど低下し、農家の所得減少を引き起こしているという。

 府内産の茶は、全国でも栽培が盛んで中級品種とされる「やぶきた」が7割を占める。府は高級品種を生産する割合を増やし、中級品種が多くを占める他産地との違いを明確にして、価格の押し上げを目指すことにした。

 着目したのは、在来種を基に府茶業研究所(京都府宇治市)が育成した「鳳春(ほうしゅん)」や「展茗(てんみょう)」といった宇治種。香味や色味など品質の評価が高い上に、やぶきたの1・5倍以上の高値で取り引きされている。農林水産省に品種登録し、他の都道府県では導入できないため、宇治茶のブランド価値をアピールできると判断した。

 高級品種への改植を進めるため、府は農家の経済的負担を軽減する補助制度を拡大するほか、宇治種の苗木を育成する生産拠点を新たに設ける方針。国の助成制度の活用も促す。

 府農産課は「品種転換だけでなく、高品質な茶を求めるニーズの拡大にも努めたい」としている。