コロナ不安やコロナ疲れのためにメンタルヘルスが乱れ、「自分はダメな存在だ」と過度にダメ出ししてさらに苦しむ人は少なくない。そうした中、自宅のテレワークの休憩時間などにヨガを実践する人が増えている。ヨガインストラクターのTadahiko氏が新著で提唱する「逃げヨガ」の一部を紹介しよう――。

不安やストレス「自分にダメ出し」してしまう人のための逃げヨガとは

「気分が落ち込む」
「なんだか無性にイライラする」

厚生労働省が2020年9月に発表した「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査(※) では「何らかの不安等を感じた人の割合」は63.9%にも及びました。

※2020年4月~5月調査

コロナウイルスが人々のメンタルに及ぼす影響は計り知れません。そうした状況を背景に、改めて注目され実践する人が増えているのが、ヨガです。

美容や健康、運動不足解消のためのエクササイズとして取り組む人も多いですが、ヨガには別の効果もあります。例えば、厚生労働省のHP『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』では、「1週間のヨガ実習により不安の軽減、自己評価による睡眠の質の向上、ストレスの身体化症状の軽減、過呼吸による不快症状の軽減が生じることを示した」という検証結果(※)を掲載しています。

(※)21~46歳の140名のボランティアを対象に1週間の滞在型ヨガ実習プログラムを実施。毎日ヨガ150分×2セッションを7日間続けた70人と、通常の生活群70人とで比較

Tadahiko氏(撮影=北森順一)
Tadahiko氏(撮影=北森順一)

世の中にヨガ関連書籍はたくさんありますが、僕は「逃げヨガ」というコンセプトを提唱し、その実践法を書籍やネットで公開しています。

この逃げヨガとは、なにか。

簡単に言えば、つらい毎日から一旦逃げて→安全地帯で心と体を立て直し→新たな一歩を踏み出そう、という取り組み方のヨガです。人は進むことが善で、逃げることは悪だと思い込みがちです。でも、逃げることは現実逃避や落ちこぼれという意味ではなく、本当の人生に逃げる=本当の自分に帰るという意味なのです。コロナ禍の今こそ、このアプローチが人々のメンタルヘルスに貢献すると信じています。

心配や不安な毎日から、一旦、抜け出すことを自分に許す。そこで傷が癒えたら、再び歩き出せる。頑張らなくていい。そんな気持ちを重視したヨガです。

自分自身を取り戻すため心の安全地帯に逃げてゆっくり自分を見つめる

私たちは世間や会社、学校で常に「善い・悪い」という評価を受け続けています。それによって、いつのまにか他人の尺度で自分を計り続けることが癖になり、自分を見失ってしまうことがあります。これが生きづらさの理由でもあります。まずは、自分自身を取り戻すために「自分はどうしたいのか」「どうあるべきなのか」を、いったん心の安全地帯に逃げて、ゆっくりと見つめることが大切です。

大人も子供も「自分へのダメ出し」をしてしまうことが多いです。そうなると無意識に自分を押さえつけてしまい、閉塞感に包まれてしまう。しかし、ヨガの深い呼吸とシンプルなポーズを繰り返すうちに、小さく縮こまっていた心身のスペースが広がり、少しずつ生きることが楽になってくるのです。

実際に僕の「逃げヨガ」のレッスンを受けた方は次のように語っています。

「さまざまなしがらみから自由になれた気がする」(40代主婦)
「心の深い部分に響き、人生が変わった」(30代男性会社員)

この「逃げヨガ」ファンには同業のヨガ講師もいます。

「運動神経や柔軟性があるかないかではなく、ヨガには、もっと大切な気付きがあることを改めて感じている」(タレント・ヨガ講師 藤代有希氏)
「『自分は大丈夫!』と自分に対する信頼が増しました」(30代現役ヨガ講師)

僕は思います。みんな、ありのままの自分でいいし、生きているだけで価値があります。また、誰しもに立ち直る力があります。立ち直るために、何かを大きく変えなければいけないのではなく、目の前のちょっとしたことで気分を整えていくことが大事なのです。

「ワケもなく不安」「気分が晴れない」「落ち込みが激しい」……心がそうしたネガティブな気持ちで充満している方々に向け、以下、「逃げヨガ」の代表的ポーズと、口にするだけで気持ちを楽にしてくれる5つの言葉を紹介しましょう