米、アジアでミサイル網 中国軍抑止へ2・9兆円要求

 【ワシントン=黒瀬悦成】インド太平洋軍は今月1日、南シナ海や台湾、西太平洋への進出姿勢を強める中国軍に対抗するための「太平洋抑止構想」の実現に向け、2022会計年度(21年10月~22年9月)から6年間で270億ドル(約2兆9千億円)の予算を議会に要求した。

 産経新聞が入手した、インド太平洋軍が議会に提出した文書の概要によると、総額270億ドルのうち、グアムの米軍基地などへの攻撃を抑止するため、沖縄からフィリピンを結ぶ「第1列島線」に沿って地上配備型の精密照準攻撃ミサイル(射程500キロ以上)のネットワークを構築するため、6年間で33億ドルを要求するとした。

 また、中国軍の動きを正確かつ迅速に把握し、攻撃目標を捕捉するため、人工衛星に搭載される宇宙配備型レーダー網の拡充に向けて23億ドルを要求した。

 同盟・パートナー諸国との共同訓練の活発化や、グアムの米軍基地の防衛に向けたミサイル迎撃システムなどの防空能力を強化することも明記された。

 中国は、米国とロシアが中距離核戦力(INF)全廃条約(19年失効)を順守して中距離弾道ミサイルなどの開発と配備を全面停止していた間、インド太平洋方面に通称「グアム・キラー」や「空母キラー」などと呼ばれる中距離ミサイルの配備を進め、米海軍に対する接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略の構築を進めてきた。

 太平洋抑止構想は、こうした状況に対する超党派の危機感を背景に21会計年度の国防権限法案に初めて盛り込まれ、初年度は22億ドルが計上された。

 インド太平洋軍のデービッドソン司令官は4日、政策研究機関AEIでのオンライン講演で「中国は地域の現状を力ずくで変更しようとしている」とした上で「インド太平洋の軍事バランスは米国および同盟諸国に不利になりつつある」と警告した。

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