ファストファッションの王者ZARAなどが中国で低迷 デジタル化の波に乗り遅れ

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今年1月、ZARAなどのブランドを持つアパレル大手のインディテックス(スペイン)が、中国で展開するZARA以外のブランドの全店舗を閉鎖し、オンライン販売のみを継続すると発表した。同社は昨年6月にも全世界で1000〜1200店舗を閉鎖し、オンラインを強化すると発表していた。

新型コロナ禍により、インディテックスの2020年上半期の売上高は前年比30%減で、約15億元(約240億円)の赤字となった。苦境はほかのファストファッションブランドでも同じで、2018年以降、すでに「TopShop」、「New Look」、「Forever21」、GAP傘下の「Old Navy」などが中国から撤退し、C&Aが中国事業を譲渡した。

「ファスト」でも「ファッション」でもなくなった

2002年にユニクロが上海店を出店したのを皮切りに、ZARA、C&A、H&M、GAP、Forever21などが一気に中国に出店した。これらのブランドは目新しいデザインと、従来のアパレルとは一線を画すビジネスモデルで成功を収めた。

彼らは「SPA(製造小売業)」と呼ばれる商品企画、製造、販売のすべてを手掛けるモデルで、サプライチェーンを磨くことで商品のリードタイムを大きく短縮させ、トレンドを反映した製品を発表し続けた。ZARAはその最たる例で、デザインから発売まで2〜3週間しかかからないという速さだ。

しかし、この「ファスト」の特徴は、すぐに中国本土の同業者に真似されてしまい、同質化が進行した。さらに、モバイル・インターネットの普及で消費者のデータのリアルタイムでの収集と分析が重要になったが、始めからECを利用している国内ブランドのほうがこの変化にいち早く適応し、海外の大手よりも迅速に市場に対応できるようになった。

「ファッション」という点において、ファストファッションはトレンドを生み出すのではなく、トレンドをキャッチし迅速に反応することを身上とする。その結果、ファストファッションはどこかハイブランドを連想させるデザインとなりがちで、個性的な服装を求める消費者にニーズに合わなくなりつつあった。また、ファストファッションによる環境汚染も取り沙汰されており、この点も若者から敬遠される原因となっている。

オフライン重視の戦略も中国での成長を阻んだ。大都市が飽和すると中小都市に進出することになるが、ファストファッションはショッピングモール内の店舗を中心とするため、モールが少ない中小都市での出店がなかなか進まなかった。さらに、中小都市ではより廉価な国内ブランドがすでにかなりのシェアを持っており、それを突き崩すのも困難だ。

変化に適応できるか

モバイル・インターネットとECによって、中国の個人消費のスタイルは大きく変化し、各業界ともそれに合わせた調整をしなければならなくなった。オフラインにこだわった海外の大手よりも、国内ブランドがより早く適応できたことは上述の通りだ。

海外の大手がオンライン展開をしなかったわけではない。しかし、彼らの多くはオフィシャルサイトと公式アプリでの販売にこだわったため、トラフィックではECプラットフォームに大きく水をあけられている。それ対し国内ブランドは、使えるプラットフォームをすべて活用する身軽さで、プラットフォームの成長とともに事業拡大に成功した。

思えば、インディテックスは当初世間の変化を捉え、それを反映したビジネスモデルをアパレル業界に持ち込むことで成功した。それならば、特徴的で変化がより速い中国市場では、当時のような適応力をもう一度身に着けなければならないだろう。

その変化の兆しとして挙げられるのが、ZARAがライブコマースを始めたことだ。2020年1月から、アリババ傘下の「天猫(Tmall)」とWeChat内のミニプログラムでZARAの専用チャンネルが開設され、販路開拓とファン層の拡大に努めている。一方、ZARAのライバルであるH&Mは、逆にオフラインでの新規出店を始めている。同社傘下の「ARKET」と「&Other Stories」はまもなく中国1号店をオープンする予定で、さらに会員制ブランドの「Singular Society」も展開する予定だ。特に後者は服飾のほか、インテリア、日用品なども扱う高級志向の店舗であり、ファストファッションのイメージからの脱却で変化に適応する試みだと言える。

こうした戦略がどのような結果を生み出すのかはまだ不明だが、これから先も変わり続ける中国市場において、一つの戦略だけで生き残れないことは確かだ。

原作者:「深響」(Wechat ID:deep-echo)、郭凡瑜

(翻訳・小六)

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