国の責任認める 福島第一原発事故の避難者訴訟で東京高裁判決

2021年2月19日 21時54分

原発避難者訴訟の控訴審判決で勝訴し、垂れ幕を掲げる原告代理人の弁護士ら=19日、東京・霞が関の東京高裁前で

 東京電力福島第一原発事故後に福島県から千葉県などに避難した住民ら43人が国と東電に損害賠償を求めた集団訴訟の控訴審判決で、東京高裁(白井幸夫裁判長)は19日、国の賠償責任を認めなかった一審の千葉地裁判決を変更し、国と東電双方の責任を認めた。東電に約2億7800万円、うち国に約1億3500万円を連帯して支払うよう命じた。
 全国で約30件ある集団訴訟で、高裁判決は3例目。昨年9月の仙台高裁判決は国の責任を認めたが、今年1月、国の責任を認めた前橋地裁判決を東京高裁判決は覆した。今回の判断は国の責任を認める2例目の高裁判決となった。

◆津波対策命じなかった国は「著しく合理性欠く」と違法性認定

 この日の判決は、国が2002年に公表した地震予測「長期評価」を「相応の科学的信頼性がある」と評価。国が津波対策の妥当性を判断する際に長期評価を重視しなかったことを「著しく合理性を欠く」と批判し、福島第一原発に大きな津波が到来する予見可能性があったと判断した。
 その上で、防潮堤の設置などの措置を講じていれば「津波の影響は相当程度軽減され、全電源喪失の事態には至らなかった」と認定。国が規制しなかったことと事故との間に「責任を認めるに足りる因果関係がある」として「規制権限を行使しなかったことは国家賠償法上、違法だ」とした。
 国の責任は東電と同程度としたが、原告のそれぞれへの請求額が違うため、賠償額が異なった。
 一審は「国は長期評価に基づき津波の発生を予見できた」としながらも「津波の規模の大きさから措置を講じても、原発事故を回避できなかった可能性がある」として国の責任を否定。東電にだけ約3億7600万円の賠償を命じていた。(山田雄之)

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