AmazonやGoogleが、「雑談できるAI」を熱心に研究する“超現実的”な理由

雑談を通して「人間」がわかる
昨今、「雑談できるAI」に注目が集まっていることをご存じだろうか? 人間の会話の約60%は雑談であるとも言われていて、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)ほか世界中の企業が、「高度な雑談が可能なAI」を開発すべくしのぎを削っている。日本のAI研究のトップランナーである東中竜一郎氏の新刊『AIの雑談力』から、その裏側を紹介する。
 

「何気ない雑談」が、情報の宝庫

雑談ではお互いの人となりを知りあう過程で、様々な話題が交わされます。

以前、私の研究グループで人間同士のチャットを収集したときのこと。人間同士をランダムにマッチングして、自由なトピックで話してもらいました。そして、収集した数千対話について、発話のそれぞれにトピックを示すラベルを付与していきました。たとえば、この発話は「映画」、この発話は「ラーメン」、この発話は「京都」といった具合です。

この結果、雑談には本当に多様な話題が含まれていることが確認できました。図は頻度が多かったトピックを示しています。一番多かったトピックは「旅行」、2位は「料理」、3位は「映画」でした。これらについては「確かに多そうだな」という印象を持つ方も多いと思います。

しかし、一番高頻度の「旅行」であっても、その頻度は全体の0.7%もありません。グラフは非常にロングテール。このままずっと右端まで続いていきます。人間同士における雑談の話題の広がりは大変なものです。

主な雑談のトピック(グラフ作成:本島一宏)
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また、収集した対話の発話のそれぞれについて、発話意図を示すラベルも付与しました。発話意図とは「質問」とか「挨拶」といった、発話が持つ意味のラベルのことです。たとえば、「スカイツリーを知ってますか?」であれば「質問」ですし、「こんにちは」であれば「挨拶」といった感じです。

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