菅首相と経産省の思惑は…?炭素税見直しを「ただの増税」にしてはならない
カーボンニュートラル実現のために「カーボンプライシング」という発想
「数千億円ではなく、どんどん増やしていかないといけない」――。
菅義偉総理は2月5日の衆議院予算委員会で、立憲民主党の岡田克也議員に化石燃料の消費に課税している地球温暖化対策税(温対税)制度の見直しや増税の必要性を問われて、こう答弁した。税制の見直しと増税に積極的な姿勢を示したのである。
温対税は炭素税の一種で、その名の通り、気候変動対策を進める狙いから2012年に導入された。代表的な温暖化ガスであるCO2の排出量1トンにつき289円を課税するというもので、2022年度の税収見込みは2600億円となっている。使途は、主に再生可能エネルギー導入や省エネ対策の支援だ。
炭素税を課す国は、北欧中心に世界各地に広がっている。スウェーデンのようにCO2の排出量1トンにつき1万円を超す例があるのと比べると、日本の温対税は税率が低い。
菅総理が去年秋の所信表明演説で、2050年にCO2排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現を目指すと表明した以上、温対税の見直しと課税強化は不可欠と言わざるを得ない。
しかし、闇雲に増税をされては、一昨年10月の消費増税に苦しめられたばかりの国民や経済界はたまったものでない。そこで、今日は温対税の見直しや増税に不可欠な視点を考えてみよう。
まず炭素税がなぜ、カーボンニュートラル実現のために必要なのか。歴史的に見れば、CO2をはじめとする温暖化ガスは「外部不経済」と言われ、資本主義では解決できない問題とされてきた。企業にとってCO2排出は無料なので、経営が考慮に入れることはなく、垂れ流し状態だったのである。
そこでカーボンプライシングという発想が登場。炭素税(もしくは温対税)のように、CO2の排出1トンにつきいくらという形で税を負担させて、コストを顕在化(内部化)する動きが広がったのだ。