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日本たばこ産業(JT)は9日、落ち込みが続く国内たばこ事業で大規模なリストラと組織再編を実施すると発表した。東京都内にある同事業の本社機能をスイス・ジュネーブに移した上で、海外のたばこ事業と統合することが柱だ。同時に国内の正社員1000人規模の希望退職や福岡県内の2工場閉鎖を通じて、経営の効率化も図る。
現在、主力のたばこ事業では、国内事業を東京都港区の本社で担当し、海外事業はジュネーブに拠点を置くグループ会社「JTインターナショナル(JTI)」が担っている。今回の再編では国内事業を2022年1月にJT本体から切り離してJTIの傘下に置く。国内の販売計画や商品開発を含めた経営戦略はJTIが主導する形となる。
さらに国内に4か所ある生産拠点のうち、九州工場(福岡県)を22年3月に閉鎖し、子会社のフィルター工場も閉める。国内たばこ事業や本社部門に在籍する正社員約6500人のうち、15%に当たる1000人の希望退職を実施。営業活動を補佐するパート従業員も1600人の退職勧奨を行う。一連のリストラ策で370億円の費用を見込む。
食品や医薬などの事業や、グループ全体の人事といった本社機能は東京に残す。
寺畠正道社長は9日のオンライン記者会見で、「創立以来の最重要転換期にあたる。打ち勝つには、経営資源を効率的に配分する必要がある」と述べた。
JTによる国内紙巻きたばこの販売本数は、20年度は687億本となり、1985年度の3032億本に比べて5分の1に減少。昨年4月の改正健康増進法全面施行や、コロナ禍に伴う喫煙所閉鎖の動きが逆風となる。
これに対し、JTによる海外での販売本数は20年度に4357億本に達し、すでに国内販売を大幅に上回る。9日に発表した20年12月期の連結決算(国際会計基準)でも、約2・1兆円の売り上げ収益の7割程度を海外が占めている。
JTは1985年に日本専売公社から民営化した当時、国内に30か所以上あった工場や3万人超の社員を段階的に削減する一方、海外では積極的な合併・買収(M&A)を繰り返し、世界3位のたばこメーカーに成長した。2007年には、当時のM&Aとしては、最高額となる2・2兆円で英ギャラハーを買収した。
反面、世界的に加熱式たばこの需要が急拡大している流れには乗り遅れた。国内の加熱式市場では米フィリップ・モリスの「アイコス」が7割を占め、JT製品は1割程度にすぎない。事業戦略をたてる司令塔が国内と海外に分かれていたことが一因とされ、今後はスイスのJTIが主導する形で経営判断のスピードアップを図る。
JTの構造改革の骨子
▽国内たばこ事業の本社機能をスイス・ジュネーブの拠点に統合
▽国内の支社体制を22年4月に改編。160支社・支店から47支社に
▽九州工場と子会社のフィルター製造工場(ともに福岡県)を22年3月末に閉鎖
▽正社員1000人規模の希望退職を募集。パート従業員1600人を含め、たばこ事業全体で3000人規模を削減