日本企業では、内部留保が減少し、零細宿泊業などいくつかの部門では、すでにマイナスになっている。
これらの分野では、固定資産や人員を削減して事業規模を縮小しようとしているが、資金繰りがつかないと、連鎖倒産を引き起こしかねない。
GoTo政策のような需要喚起策では、この問題は解決できない。縮小均衡への移行を援助する政策が必要だ。
零細宿泊業などで内部留保がマイナスに
これまで、日本企業は内部留保をため込み過ぎていると批判されてきた。しかし、その状況がコロナ不況で一変した。
なお、内部留保というのは、正式の用語ではない。企業会計では「利益剰余金」という用語が使われている。そこで、以下では「利益剰余金」と呼ぶことにしよう。これは、過去の利益を蓄積したものだ。
法人企業全体でも、零細企業(資本金1000万~2000万円の企業)だけをとっても、利益剰余金は減ったとはいえ、いまだに巨額だ。
2020年7~9月期、全産業全規模で見ると、利益剰余金は453兆円だ。前年同期の471兆円から20兆円減ったとはいえ、四半期の売上高309兆円を上回る。
資本金1000万~2000万円の企業を見ても、利益剰余金は50兆円。前年同期の60兆円から約10兆円減ったが、四半期売上高37兆円を上回る。
しかし、表1に示す分野では、利益剰余金がマイナスになっている。過去の黒字が積み上がっているのではなく、赤字が積み上がっているのだから、異常な事態だ。
なお、利益剰余金がマイナスになったところで、直ちに倒産というわけではない。金融機関が貸してくれれば、資金繰りがついて、生き延びられる。
しかし、貸し倒れのおそれがきわめて高い対象に進んで融資してくれるところはないだろう。するとさらに業績が悪化して、利益剰余金のマイナスがどんどん大きくなり、ついには資本を上回る。そうなると、債務超過になってしまう。こうした状態になると、極めて危険だ。