ソフトバンクも手を出した「SPAC」上場、いまアメリカで大流行する「危ない仕組み」
米国の投資運用会社で働いた経験があり、『マネーの代理人たち』の著書もある小出・フィッシャー・美奈氏が、SPACの仕組みと危うさについて解説する。
新型コロナが生んだ「金余り」
年が明け、一年の株の行方を占うシーズンがまたやってきた。 投資というのは、見えない未来に期待する行為だ。
前頭葉のないネコには「未来」というコンセプトがないから投資しないし、未来が見える宇宙人も、アービトラージ(鞘取り)が成立しないので投資は(きっと)しないだろう。そういう意味では、とても人間的な行為ではないだろうか。
ちなみに昨年初頭の株式予想では、株が上がるという強気予想が、弱気予想より多かった。日経平均は昨年16%程度値上がりしたので、結果的には強気予想は当たったことになる。でも、新型コロナウィルスに端を発したロックダウンにより、2月下旬から3月中旬にかけて世界の株が3割も急落する大波乱は誰も予想できなかった。
株の予想と初詣のおみくじは、どちらもあまり当てにしない方が良さそうだ。
だが、今年の世界の株の行方を考える上で、これだけは見ておきたいという指標がある。それは、米国連邦準備制度理事会(FRB)のバランスシートだ。
拡大画像表示出典:FRB
コロナ不況でも不思議と株が下がらない理由については以前の記事(→なぜコロナ不況でも株は下がらない?「出口なき金融政策」の行方)でも触れたが、今の株式市場は、FRBをはじめとする各国中央銀行の「異次元緩和」にすっかり依存してしまっている。
逆に言えば、ワクチンが行き渡り、経済が回復して、FRBが引き締めに転じたら株は要注意だ。
上のチャートの通り、本来FRBは、リーマンショック後に4.5兆ドルまで膨らんだバランスシートを、「出口戦略」によって、市場に影響を与えないようゆっくりと縮小させつつあった。ところがその矢先に新型コロナが発生したため、方向転換してバランスシートを一気に7兆ドル以上に膨らませたのだ。
これにより、ロックダウン以降、3兆ドル(約310兆円)ものマネーが市場に送り込まれた。本来下がるはずの株は下がらず、FRBは「出口」から出られなくなってしまった。
そして今、株式市場ではコロナ禍の只中で、時ならぬ「金余り」現象が発生している。