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2021年の10大リスク、トップは米国の分断-ユーラシア・グループ

  • コロナ問題長期化、グリーン化、米中緊張関係の波及、データ競争
  • サイバーリスク、トルコ、産油国、メルケル独首相退陣、中南米

2021年の市場にとってナンバーワンのリスクは、トランプ米大統領が大統領選挙の結果を受け入れず米国の分断が深まっていることだとコンサルティング会社のユーラシア・グループはみている。

  国際情勢のリスク分析を手掛ける同社のイアン・ブレマー社長とクリフ・カプチャン会長はリポートで、米国民のほぼ半数がバイデン次期米大統領のリーダーシップに正当性を見いださないという、主要7カ国(G7)の首脳がこれまで経験したことのない課題をバイデン氏が抱える可能性があると指摘した。

  同時に新型コロナウイルス感染症(COVID19)のパンデミック(世界的大流行)がもたらした経済的影響にどのようにして対処していくかを巡る世界的なリーダーシップの欠如は「誰もが問題を抱えている」ことを意味するとの見方も両氏は示した。

ユーラシア・グループのブレマー社長が語る

Source: Bloomberg)

  ユーラシアが選んだ21年のトップリスクは以下の通り。

1.米国の分断

  トランプ大統領の選挙結果受け入れ拒否が米国の深い分断を浮き彫りにしている。COVID19ワクチン接種がスムーズに進み、パンデミックが抑制されれば、バイデン氏が共和党からも一定の政治的評価を得る可能性があるものの、厳しい課題が続く。

2.コロナ問題長期化

  COVID19ワクチンは世界が21年に正常化に向かうことに寄与するが、「各国がワクチン接種のスケジュール達成に苦しみ、パンデミックが高水準の公的債務や離職者、信頼の喪失という負の遺産を残す」とユーラシアは予想している。

3.グリーン化

  米国はバイデン政権下で炭素排出の実質ゼロ目標など気候変動のイニシアチブに再び参加しようとしているが、「より野心的な気候変動対策による企業や投資家のコスト」と各国・地域の計画協調を「過大評価することによるリスク」があるとユーラシアは指摘した。中国や欧州連合(EU)、英国、日本、韓国、カナダも国内・地域経済をより環境に優しいものにすると表明している。

4.米中緊張関係の波及

  米中間の経済関係は今年、これまでほど対立的ではなくなるだろうが、米国から同盟国へのストレス波及や他国へのワクチン配布での競争、グリーンテクノロジーに関する競合により、緊張が再燃する可能性がある。

5.データ競争

  国境を越えたデジタル情報の流れが鈍るに伴い米中間の競争が最重要となり、データに依存する企業の重しになるだろう。中国政府は恐らく国外技術への依存を減らし続け、米国は国民の個人情報を安全に保つ取り組みを進める。

6.サイバーリスク

  自宅からテクノロジーにアクセスする人々が増える中で、サイバースペースにおける国家の行動に関する世界的ルール作成で政府・民間部門の両方でほとんど前進が見られず、攻撃やデータ盗難の可能性が高まっている。

7.トルコ

  ユーラシアによると、トルコは昨年、危機を回避することができたが、21年に入っても脆弱(ぜいじゃく)なままだ。エルドアン大統領は4-6月(第2四半期)に再び圧力に見舞われ、景気拡大を促そうとするかもしれないが、そうすることで社会的緊張をあおる恐れがある。

8.産油国にとって厳しい年に

  中東・北アフリカのエネルギー生産国で抗議活動が激化し、改革が遅れる可能性がある。歳入の大半を石油から得るイラクは基本支出予算の確保や自国通貨安の阻止に苦しむ公算が大きい。

9.ドイツのメルケル首相退陣

  ドイツのメルケル首相は欧州で最も重要なリーダーであり、同首相が去れば欧州のリーダーシップが弱まることから、今年後半のメルケル首相退陣が欧州最大のリスクだとユーラシアは分析している。

10.中南米が抱える問題

  中南米諸国がパンデミック以前に直面していた政治・社会・経済問題が、一段と厳しくなるリスクがある。アルゼンチンとメキシコでは議会選挙が行われ、エクアドルとペルー、チリは大統領選挙を控えている。ポピュリズムに訴える候補者が増え、特にエクアドルでは同国の国際通貨基金(IMF)プログラムと経済安定を危うくする可能性がある。

原題:A Divided U.S. Tops Pandemic in Eurasia’s List of Market Risks(抜粋)

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