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政府と知事また温度差 首都圏緊急事態要請 経済重視、宣言なお慎重

 新型コロナウイルス「第3波」は年明け早々、首都圏の4都県知事が政府に緊急事態宣言の発出を要請する事態に至った。菅義偉首相は昨年末の臨時記者会見で感染抑え込みに国民の協力を求めたが、年末年始の人出は思ったように減らず、新規感染者の急増で医療崩壊の危機が迫る。内閣支持率が急落する中、経済回復を重視する首相はなお動かず、またも追い詰められつつある。

 2日夜、3時間に及ぶ異例の会談を終えた西村康稔経済再生担当相と4知事がそろって記者会見に応じた。「厳しい状況を共有した」と結束を強調する5人。だが「徹底した人流の抑制を図る必要がある」(小池百合子東京都知事)と宣言の必要性を強くにじませる知事側に対し、西村氏は「要望は国として受け止める」。飲食店に対する一層の営業時間短縮要請で矛先をかわし、温度差がみるみるあらわになった。

 複数の関係者によると、この日の要請は小池氏が仕掛けた。まず埼玉県の大野元裕知事が呼応し、12月29日から準備に入った。31日の新規感染者は東京都で一気に1337人に。4都県いずれも過去最多となり、神奈川、千葉も年明け1日に加わることを決めた。

 しかし、政府は水面下の交渉で知事側に難色を示した。首相が宣言発出に否定的だったからだ。

 官邸に独自のパイプを持つ神奈川県の黒岩祐治知事はこの日、西村氏ではなく首相との直接会談を強く要望したが、首相は応じなかった。公邸で官僚らと感染状況を分析後、西村氏に30分間にわたって電話で指示を与えると、首相はそのまま宿舎に引き揚げた。

 「知事たちに会わず、会談の相手を西村氏にとどめたのが首相の答え。宣言を出す機は熟していないというメッセージだ」。政府関係者は首相の意図をこう解説する。

 踏み込んだ感染抑止策を求める知事と、経済重視で動きの鈍い国-。コロナ対策を巡り安倍晋三前政権から何度も繰り返されてきた構図だ。政府と知事のどちらに対策の主導権があるのかも、いまだにはっきりしない。

 もっとも、首相は継続にこだわった「Go To トラベル」の一時停止に踏み切った。12月25日に記者会見し、大みそかには記者団の取材に応じて「不要不急の外出自粛を」と強く呼び掛けた。こうした背景に、感染を抑止できない政府に対する厳しい世論があったのは間違いない。

 だが効果が数字に表れない以上、宣言に後ろ向きな姿勢は世論の政権批判をさらに高めかねない。医療界からも「崩壊の危機」と厳しい声が続出している。

 「国と地方でけんかしている猶予はもうないはずなのに」(官邸関係者)との声は、政府内からも上がっている。 (湯之前八州、一ノ宮史成、河合仁志)

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