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熟成ドイツ車の魅力とは──メルセデス・ベンツCクラス&アウディA4に乗って考えた

ドイツ車はモデル末期がいい! と、言われているがホントなのか? 登場から月日の経った2台のドイツ車に乗って小川フミオが考えた。
アウディ AUDI メルセデス・ベンツ Mercedesbenz A4 Cクラス C220d ステーションワゴン A4アヴァント セダン ドイツ車
Sho Tamura
アウディ AUDI メルセデス・ベンツ Mercedes-benz A4 Cクラス C220d ステーションワゴン A4アヴァント セダン ドイツ車
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悩ましい選択

“ドイツ車はモデル末期に近づくほどいい”という説がある。なるほどと思ったのは、2020年秋に、メルセデス・ベンツ「C220dステーションワゴン ローレウスエディション」と、アウディ「A4 45 TFSI quattro S-line」に乗る機会があったからだ。

この2台のドイツ車は、新しくない。メルセデス・ベンツCクラスの発表は、2014年。アウディA4は2016年。そろそろモデルチェンジが噂されてもおかしくない。でも、両車はかなりよい。

【主要諸元(C220dステーションワゴン ローレウスエディション)】: 全長×全幅×全高:4720mm×1810mm×1440mm、ホイールベース2840mm、車両重量1730kg、乗車定員5名、エンジン1949cc直列4気筒DOHCディーゼルターボ(194ps/3800rpm、400Nm/1600〜2800rpm)、トランスミッション9AT、駆動方式RWD、タイヤサイズ(フロント)225/45R18(リア)245/40R18、価格638万円(OP含まず)。

Hiromitsu Yasui

アルミホイールはAMGデザイン。

Hiromitsu Yasui

Cクラスも、A4も、年を経るにつれ、改善につぐ改善をうけ、よりよいクルマへ”熟成”している。前者は後輪駆動(と4WD)、後者は前輪駆動(と4WD)。駆動方式でみても、2社のクルマづくりのコンセプトのちがいが明確だ。

ではどっちがいいか? どっちが買いか?

【主要諸元(A4 45 TFSI quattro S-line)】: 全長×全幅×全高:4770mm×1845mm×1410mm、ホイールベース2825mm、車両重量1610kg、乗車定員5名、エンジン1984cc直列4気筒DOHCガソリンターボ(249ps/5000〜6000rpm、370Nm/1600〜4500rpm)、トランスミッション7AT、駆動方式4WD、タイヤサイズ245/40R18、価格627万円(OP含まず)。

Sho Tamura

試乗車の19インチ・アルミホイールは、19万円のオプション。

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Cクラスの扱いやすいディーゼル・エンジン

Cクラスのモデルライフのなかで特筆すべきは、エンジン・ラインナップが折りに触れてアップデートされてきた点だ。とくにいまは、プラグ・イン・ハイブリッドや、BSG(マイルドハイブリッド)搭載モデルの存在感が際立つ。

BSGとはベルトドリブンスタータージェネレーターのことをいう。発進時などに限定して電気モーターがまわり、エンジントルクが足りないところを補うシステムだ。基本的にはエンジンで走るところが、フルハイブリッド車とちがう点。

JC08モード燃費は18.9km/L。

Hiromitsu Yasui

搭載するエンジンは1949cc直列4気筒DOHCディーゼルターボ(194ps/3800rpm、400Nm/1600〜2800rpm)。

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試乗車はオプションのスポーツプラスパッケージ装着車(33万9000円)だったため、ステアリング・ホイールはAMGデザインの専用タイプだった。

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載せているパワーユニットによって、乗り味がけっこう異なるのもCクラスの特徴だ。パワフルなエンジンでは足まわりが硬く締め上げられ、スポーティな運転感覚に。いっぽう、あたりのやわらかめの、好感がもてる味わいを持つのが、今回のディーゼルエンジン車だ。

143kW(194ps)の最高出力と400Nmの最大トルクを発揮する1949cc直列4気筒ディーゼルに、ターボチャージャーを備える。期待にたがわず、1500rpmあたりから力を出し、3000rpm以下の、一般的な使用状況下でよく使うエンジン回転域で、もたもたした動きがなく、とても扱いやすい。

スポーツプラスパッケージを選択すると、足まわりはエアサスペンション・システムの「AIR BODY CONTROLサスペンション」になる。

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高速では、しっかりした手ごたえのステアリング・ホイールは安心感が高い。レーンを移るときなどのボディの動きは自然だし、やたらクイックではないが、しっかりした反応のある操舵感は、SクラスやEクラスに通じるものがある。

ラゲッジルームは通常時460リッター。

Hiromitsu Yasui

リアシートをすべて倒すと1480リッターに拡大する。

Hiromitsu Yasui

リアシートのバックレストは、ラゲッジルームサイドにあるスウィッチでも倒せる。

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ラゲッジルームのフロア下には小物入れがある。

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折りたたみ式の収納コンテナは標準。

Hiromitsu Yasui

劇的に走りがよくなったA4

A4 45 TFSI quattroは、C220d ステーションワゴンに対して、より積極的に運転を楽しませてくれるモデルだ。2020年秋にマイナーチェンジを受け、フェイスリフト(外観の変更)するとともに、走りが劇的によくなった。

ひとつは、ステアリング・ホイールを切ったときだ。操舵感がしっかりしている。ステアリング・ホイールの動きに合わせてボディが動く速度は、最初のところが少しゆっくりに設定されていて、私はメルセデス・ベンツ車を連想してしまったほどだ。

WLTCモード燃費は12.9km/L。

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搭載するエンジンは1984cc直列4気筒DOHCガソリンターボ(249ps/5000〜6000rpm、370Nm/1600〜4500rpm)。

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トランスミッションは7ATのみ。

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さらにステアリング・ホイールを切り込めば、ボディの動きはするどさを増す。基本的には車体がロールする度合いは抑えめで、カーブが連続する道などでは、かなり楽しい。

2.0リッター直列4気筒ガソリンターボ・エンジンは、183kW(249ps)と370Nmを発揮する。マイルド・ハイブリッド化されたため、エンジン回転数にかかわらず、アクセルペダルへの反応が速くなった。それもドライブの楽しさに貢献している。

最小回転半径は5.5m。

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メーターはフルデジタル。ナビゲーションマップも表示出来る。

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S lineはステアリング・ホイールも専用デザインだ。

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クルマとドライバーとの一体感が気持ちよい。クワトロシステムは燃費を考え、低負荷時は前輪のみを駆動するタイプだ。1980年にアウディがクワトロを市場に導入した際は、アウトバーンを250km/h超でぶっとばすのに四輪駆動が役立つというものだった。時代を経て、クワトロの役割は多様化しているのだ。

ラゲッジルーム容量は460リッター。

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リアシートのバックレストは40:20:40の分割可倒式。

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スポーティな内外装

今回乗ったふたつのモデルは、すこしスポーティな装備を組み込んである。C220dステーションワゴンは、ローレウスエディションと呼ぶ特別仕様だ。18インチのAMG軽合金ホイール、ドリルド(冷却のための孔あき)ブレーキディスク、黒を基調にスポーティな雰囲気を盛り込んだという内装などで構成される。

試乗車はオプションのレザーエクスクルーシブパッケージ装着車(46万4000円)のため、エアバランスパッケージ(空気清浄機能、パフュームアトマイザー付)が含まれる。

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レザーエクスクルーシブパッケージ装着車のため、シート表皮は本革だ。

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リアシートはセンターアームレスト付き。

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インパネ下部の、ローレウスエディションを示す専用プレート。

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ブルメスターサラウンドサウンドシステムはレザーエクスクルーシブパッケージに含む。

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車高調整スウィッチや走行モード切り替えスウィッチはセンターコンソールにある。

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メーターはフルデジタル。

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レザーエクスクルーシブパッケージに含まれる360°カメラ。

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いっぽうA4 45 TFSI quattroのS-lineは、専用設定のスポーツサスペンションをはじめ、18インチ軽合金ホイール、さらにシートやステアリング・ホイールを含めた内装が専用デザインのものとなる。セダンといっても、すこしスポーティな仕様が日本市場では人気のようだ。

最新のインフォテインメントシステム「MIB3」を搭載したインテリア。

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インパネ上部のスクリーンはタッチパネル式になり、操作性が向上した。

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バング&オルフセンの3Dアドバンストサウンドシステムは17万円のオプション。

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シートはS line専用デザイン。試乗車は S lineプラスパッケージ装着車(8万円)だったため、運転席メモリー機構と4ウェイの電動ランバーサポート(フロントシート)付き。

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全席シートヒーターは7万円のオプション。

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リアシートは、フロントシートと異なるエアコン温度を設定出来る。

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標準モデルのシート。

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以前からクルマ好きのあいだでささやかれてきた言葉に「モデルチェンジ前をねらえ」というものがある。モデル・ライフ内での熟成・進化が行き着くところまで行き着いて、そのクルマの持つポテンシャルがめいっぱい引き出されているから、というのが理由だ。

今回の2台を、モデルチェンジ直前と言い切ってしまうのは乱暴ではあるものの(Cクラスは2021年にフルモデルチェンジが予定されている)、ともに熟成のきわみにある、という印象だった。

Hiromitsu Yasui

とはいえ、ひとによっては、インフォテインメントシステムに、デビュー年がひとむかし前だったことを感じてしまうだろう。このあたりは両車のネックになりそうだ。そのうち、iPhoneのように、画面だけで操作できるようになれば、アップデート化が簡単になるだろうが。

Sho Tamura

価格は、メルセデス・ベンツ「C220d ステーションワゴン ローレウスエディション」が666万円。いっぽう、アウディ「A4 45 TFSI quattro S-line」が627万円。価格はさほど変わらない。

落ち着きをとるか、楽しさをとるか。セダンにするかワゴンにするか……けっこう迷いそうだ。

アウディ AUDI メルセデス・ベンツ Mercedes-benz A4 Cクラス C220d ステーションワゴン A4アヴァント セダン ドイツ車
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文・小川フミオ 写真・安井宏充(Cクラス)、田村翔(A4)