新型コロナウイルスの感染拡大が続き、「医療崩壊」が叫ばれている。患者を受け入れている医療機関や現場の医療関係者が日々消耗する一方で、全医療機関の約8割、集中治療室(ICU)のある医療機関の4つに1つがコロナ患者を受け入れていないというデータもある。病床数世界一とされ、欧米より感染規模がはるかに小さい日本で、「医療緊急事態」となるのは、どこに問題があるのか。
政府は25日、病床が逼迫している地域で、重症者を受け入れる1病床につき1500万円、それ以外の患者は1床450万円をそれぞれ補助すると明らかにした。
ただ、即効性があるかどうかは不透明だ。田村憲久厚生労働相は記者会見で、「病床や医療人材の確保を進めるが、限りがある。感染者をいかに増やさないかが重要だ」と強調する。
「スタッフも体力の限界にきているが、最後の砦(とりで)として使命感を持ち、気力でやっている。だが、先行きが見えないと気ももたない」
重症者を受け入れている近畿大学病院(大阪府大阪狭山市)の東田有智院長はこう明かす。
同院は24日時点で重症者病床12床のうち10床が埋まっている。医師3人と看護師35人程度が対応するが、増床や要員補充は容易ではないという。
東田院長は、「医師や看護師の体力や慣れがないと重症者対応は難しく、感染対策や病室の隔離なども必要だ。人工呼吸器やECMO(エクモ=人工心肺装置)などの医療機器を動かせる人間もたくさんはいない。1人でも欠ければ対応できなくなる」という。