コラム:中国アリババ、最悪のクリスマスイブに

コラム:中国アリババ、最悪のクリスマスイブに
12月24日、中国の電子商取引大手アリババ・グループにとっては、最悪のクリスマスイブとなった。写真は11月、杭州のアリババ社屋で撮影(2020年 ロイター/Aly Song )
Pete Sweeney
[香港 24日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国の電子商取引大手アリババ・グループにとっては、最悪のクリスマスイブとなった。中国政府は24日、同社が独占的な行為に関与した疑いがあるとして正式に調査を開始。香港株式市場の同社株は約9%下落し、時価総額600億ドルが吹き飛んだ。
金融規制当局は、アリババ傘下の金融会社アント・グループについても調査を進めている。
アリババのカリスマ創業者、馬雲(ジャック・マー)氏は、中小企業の味方としてイノベーションを推進。国内で高い人気を集めている。こうした熱狂的な支持が、政治的な責任を問われる下地になったのかもしれない。
馬雲氏は今年10月、フィンテック企業に対する過剰規制に公の場で苦言を呈した。一部では、これがもとでアント・グループの新規株式公開(IPO)が差し止められたとの見方も出ている。アントは事実上、馬雲氏が経営権を握っており、IPOは過去最大規模になると予想されていた。
確かに、中国政府はアリババとアントに意趣返しをしたように見える。だが恐らく、理由は、両社の市場支配力以外の何物でもない。
アントのモバイル決済サービス「支付宝(アリペイ)」は、テンセントの決済サービスとともに国内市場を支配。アントは、国内でも特に人気が高いマネーマーケットファンド(MMF)も運用している。
アリババの電子商取引サイト「淘宝網(タオバオ)」と「天猫(Tmall)」は、ライバルのピンドゥオドゥオや京東商城(JDドットコム)に少しずつシェアを奪われているものの、両サイトを通じた取引は、国内電子商取引の売上高の半分以上を占める。このため、市場支配力の乱用に対する懸念が浮上するのも不思議ではない。
中国国家市場監督管理総局は、出店者に競合するプラットフォームで商品を販売しないよう独占的契約の締結を迫る「二選一(二者択一)」というアリババの慣行に懸念を表明。こうした戦術を使っているのは、決してアリババだけではないが、見せしめとしてトップ企業を罰すれば、強力なメッセージを送ることができる。香港株式市場では、アリババのライバル企業の株価も下落した。
制裁金に関する新指針によると、違反企業は売上高の最大10%の制裁金を科されるとみられる。国家市場監督管理総局が、昨年度のアリババ・グループの総売上高にこの指針を適用すれば、制裁金は80億ドルとなる可能性があるが、これは対処不能な金額ではない。
24日のアリババ株は、クリスマスイブの半日取引ながらも、これを大幅に上回る時価総額が吹き飛んだ。これは、人工知能、クラウドコンピューティング、デジタルメディアにも領土を広げる馬雲氏の企業帝国への攻撃がまだ始まったばかりだと投資家が感じていることを浮き彫りにしている。
●背景となるニュース
*中国規制当局、独占的行為の疑いでアリババへの調査開始
*外株:アリババが下落、独占的行為の疑いで中国が調査開始
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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