男子第71回、女子第32回全国高校駅伝競走大会(毎日新聞社など主催)が20日、京都市のたけびしスタジアム京都(西京極陸上競技場)を発着点に行われる。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、競技場の一般入場が禁じられ、沿道での応援も自粛を求められる異例の大会だが、43回目の出場となる男子福岡県代表の大牟田もコロナ禍に巻き込まれた。
8月10日、長野県で高地トレーニングに励む大牟田駅伝部の赤池健監督(48)に学校から電話が入った。「学校で(コロナの)陽性者が出た」。恐れていた事態だ。合宿を途中で切り上げて地元に引き返した。校内では生徒ら計28人の感染が判明。「苦しい時期」が始まった。
選手らは主力が赤池監督の自宅兼下宿、他の部員が学校敷地内の寮で生活する。駅伝部はPCR検査で全員陰性だったが、他の運動部の陽性者の濃厚接触者とされ、保健所の指示で2週間、下宿や寮に隔離された。「部屋で筋トレした他は何をしたか思い出せないくらい何もしていない」と林虎大朗(こたろう)主将(3年)。部屋を出ることも制限され、食事は配給される市販弁当を食べる日々が続いた。
8月末に隔離措置を解かれたが、夏まで積み上げてきたものが2週間で「ゼロ」に。選手らはジョギングから練習を再開して徐々に走り込みを増やしたものの、県の記録会などで結果が振るわず「今年はこれまでか」(赤池監督)と観念した時期もあった。
しかし、元々地力がある選手たちは10月の全九州高校新人陸上大会(長崎市)で荒巻朋熙(ともき)選手(2年)が5000メートル、荒木暉登(あきと)選手(2年)が3000メートル障害で優勝するなど調子を取り戻していった。
選手らには「強い大牟田」を取り戻すという目標があった。大牟田は過去に全国高校駅伝で優勝5回、準優勝9回の名門だが、2013年の準優勝を最後に入賞(8位)に届かず、17、19年は県予選優勝も逃した。19年は自由ケ丘(北九州市)に敗れ、九州大会で辛くも全国切符を得たものの、都大路で再び自由ケ丘に敗れた。
その時のメンバーだった林主将や荒巻選手らは今年、思いがけない事態に見舞われながら誰一人諦めず、11月の県予選で雪辱を果たした。今年の予選は感染防止のためたすきを使わず、トラック走の合計タイムで競う変則レースだったため、たすきをつなぐのは都大路が初めて。「強い大牟田を全国に見せたい」。逆境を乗り越えた選手たちは大舞台を前に意気込む。【大坪菜々美】
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