5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (46)

2020年12月17日 17:33

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 今日は、【イノベーション特講(5)】。「サービス設計」の話をしていきます。ユーザーが「使いたくなる使いやすさ」を製品に持たせることを「サービス設計」と言います。一人ひとりユーザーによって製品の使用シーンや扱い方が変わってくるため、これらを想定した仕様にしておくことで「購入後のユーザーの損失」を回避できます。

【前回は】5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (45)

■(48)継続的に価値を感じて使い続けてもらうためには、ユーザーの裁量でサービスをコントロールできること


 しかし、それでも製品やサービス利用中に何か問題が発生した場合には、「ユーザーの裁量で問題解決できる製品・サービス」にしておけば、ユーザーがカスタマーセンターに連絡する煩わしいプロセスが減ります。こういったきめ細かなサービス設計が、ユーザーの継続的利用を促すことになるのです。

 このためには精確なUIやUX設計が必須なのですが、好例として挙げられるサービスは「メルカリ」です。私自身ヘビーユーザーなのですが、この「実用的品質」の高さには比類なき満足感があります。

 直感的に素早く操作できるUI(理解性、修得性、操作性の高さ)と、ユーザビリティの改善・進化がとにかく速いUX(使用性、効率性、即時性)がメルカリ独自の機能を生み、それらがバージョンアップし続けることで、ユーザーの主観的満足度を日々高めています。

 日本郵便とヤマト運輸との協同で低価格配送を実現した「メルカリ便」、大型荷物の梱包・発送フルサポートを安価で実現した「たのメル便」。ルール違反出品者の報告ボタンの設置、迷惑ユーザーへの警告・事務局対応・ブロックシステムなど、ユーザーはこれらをスピーディに実行できるのです。

 メルカリは電話対応型のカスタマーセンターを設けていません。問い合わせメールは設置してあるものの、膨大なユーザーが質問に回答するQ&Aサービス「メルカリボックス」で検索・閲覧することで、大体の問題は解決できてしまいます。ヤフー知恵袋みたいなものですが、ユーザーたちからの的確な助言やちょっと厳しい指摘など、煩わしくない程度の人とのつながりも面白い。

 このように作業中に何か困ったことが生じても、「自分の裁量で解決できる仕組み」をメルカリは提供しています。

 事業会社の多くはカスタマーセンター業務を委託などの外注に頼っているケースが多いです。そのためユーザーからの深い質問に精確に回答できないオペレーターが多く、その応対品質の低さに苛立つユーザーが絶えません(※自動回答のチャットサービスよりはマシかも)。中途半端な対応で無駄な時間を消耗するならば、ちょっと自分で考えて、少し手を動かすことで問題が解消するほうがマシだ! というユーザーインサイトからメルカリボックスのようなサービスが生まれていると推察できます。

 ユーザーが自分自身に裁量を与えられ、製品やサービスをコントロールしていく。その自主性に「気持ちよさ」を感じているのかもしれません。これこそが「使いたくなる使いやすさ=サービス設計」なのです。

 メルカリはきめ細やかで高品質のサービスを提供しながらも、システムエラー発生率が低く、手数料も売上の10%と極めて低い。これは、ユーザーを常時同じ目線、同じ視座で見据えているメルカリの真摯な姿勢と、超速・高次な企業努力の表れであることを私見として加筆しておきます。

著者プロフィール

小林 孝悦

小林 孝悦 コピーライター/クリエイティブディレクター

東京生まれ。東京コピーライターズクラブ会員。2017年、博報堂を退社し、(株)コピーのコバヤシを設立。東京コピーライターズクラブ新人賞、広告電通賞、日経広告賞、コードアワード、日本新聞協会賞、カンヌライオンズ、D&AD、ロンドン国際広告祭、New York Festivals、The One Show、アドフェストなど多数受賞。日本大学藝術学部映画学科卒業。好きな映画は、ガス・ヴァン・サント監督の「Elephant」。

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