パリ協定目標未達成なら「猛暑日倍増」文科省など予測
文部科学省と気象庁は4日、地球温暖化防止の国際的枠組み「パリ協定」の目標が達成できなかった場合、気温上昇により日本の気候に深刻な影響が出るとの予測結果を発表した。21世紀末の日本は最高気温がセ氏35度以上の猛暑日や、最低気温が25度以上の熱帯夜の年間日数が現在の2倍以上になる見通し。日本に大きな影響が出ることを科学的に明らかにした。
パリ協定は21世紀末までに世界の平均気温を産業革命前より2度の上昇に抑えるとの目標を掲げる。予測は国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2013年にまとめた報告書に基づき、日本周辺の観測データを加えてまとめた。第一線の気象研究者らが参加した。パリ協定の目標が達成できた場合と、達成できずに4度高まるシナリオで影響を評価した。
パリ協定の目標が未達成なら、日本の年平均気温は約4.5度高まる。全国13地点の平均で猛暑日は現在より19日増え、熱帯夜も40日増加する。非常に激しい雨や1日200ミリ以上の雨量を記録する日も2.3倍になる。
冬の気候も変わる。降雪量は北海道の一部地域を除いて7割減り、降雪期間も短くなる。最低気温が氷点下になる冬日は46日ほど減る。降雪や冬日がなくなる地域も増える見通しだ。
日本付近に近づく台風の勢力も強まる。気温上昇により台風のエネルギー源となる大気中の水蒸気量が増えるためだ。台風による雨風は強まり、猛烈な台風が日本列島を襲う可能性も高まる。
日本近海の海水温は3.58度上昇し、海面水位も平均で71センチ高くなるという。東京湾や大阪湾、伊勢湾で台風襲来時などの高潮リスクが高まる。
一方、パリ協定の目標が達成できた場合は、猛暑や豪雨などの増加幅は小さくなるが、年平均気温は約1.4度上昇する見通しだ。
今回の予測は異常気象に温暖化がどの程度関わったのかを定量的に調べる最新の科学手法も用いた。政府は50年までに二酸化炭素(CO2)などの温暖化ガス排出を「実質ゼロ」とする目標を掲げている。