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新型コロナで入院したらどんな検査・治療をうける?

忽那賢志感染症専門医
(写真:ロイター/アフロ)

第3波が到来し、新型コロナと診断され医療機関に入院する人が急増しています。

新型コロナと診断され入院が必要と判断された場合、どのような施設で、どのような検査・治療が行われるのでしょうか。

どんな人が入院になる?

これまでは新型コロナと診断されたら原則入院となっていましたが、10月14日に運用見直しが行われ、無症状・軽症の新型コロナ患者は入院勧告・措置の対象ではなくなりました。

ただし、

・ 高齢者、呼吸器疾患等の基礎疾患があるなど重症化リスクのある者

・ 症状等を総合的に勘案して医師が入院させる必要があると認める者

・ 都道府県知事が入院させる必要があると認める者

等に該当する場合については、入院勧告・措置の対象となりえます。

入院とならなかった場合は、ホテル療養、自宅療養のいずれかとなります。

どんなところに入院する?

個人防護具を着けた忽那氏の勇姿(筆者の同僚撮影)
個人防護具を着けた忽那氏の勇姿(筆者の同僚撮影)

新型コロナ患者は周囲に感染を広げないように、ゾーニングというエリア分けがされた病棟に入院します。

このため、患者は移動できる範囲が限られており、退院可能と判断されるまで病院外に出ることはできません(自治体によってはホテルへの移動は可能です)。

入院する部屋は病院ごとに様々であり、大部屋のこともあれば個室のこともあります。

また、医療従事者は感染を防ぐために個人防護具(ガウン・手袋・マスク・フェイスシールドなど)を装着した状態で診察を行います。

入院時の重症度はどのように判断される?

重症度の分類(新型コロナウイルス感染症診療の手引き第3版に筆者追記)
重症度の分類(新型コロナウイルス感染症診療の手引き第3版に筆者追記)

入院時にまず重症度の評価が行われます。

重症度は主に呼吸状態に基づいて行われます。

指先に装着して体内の酸素の量を測定するパルスオキシメーターという装置でSpO2(酸素飽和度)を測定し、この数値に基づいて酸素の吸入が必要か、人工呼吸器が必要か判断されます。

酸素が不要な状態は軽症、酸素が必要な状態は中等症、人工呼吸器が必要な状態は重症、となります。

日本国内の入院患者のレジストリであるCOVIREGI-JPによると、第1波では軽症が62%、中等症が30%、重症が9%でしたが、第2波では重症例が少なくなっています

11月現在の第3波では感染者に占める高齢者の割合が増えていることから、第2波よりは重症例が多くなることが見込まれます。

入院時に行われる診察・検査は?

入院時に行われる検査(いらすとや様に感謝しつつ筆者作成)
入院時に行われる検査(いらすとや様に感謝しつつ筆者作成)

入院後は、まず問診と診察が行われます。

問診は、

・症状が出た日(発症日)

・いつからどのような症状があるのか

・PCR検査や抗原検査を受けた日(検査日)

・持病や今飲んでいる薬

・食べ物や薬のアレルギーの有無

・感染したと考えられる機会(家庭内・会食・職場、など)

などについて聴取が行われます。

胸の聴診などを中心に、全身の診察も行われ、血圧・脈拍・呼吸数・体温の測定も行われます。

入院時の検査は、すでにPCR検査で陽性が判明している場合は、原則として再検査することはありません。

抗原検査で陽性となり入院となった方については、状況によってはPCR検査を行い診断を再確認することがあります。これは、抗原検査では偽陽性(感染していないのに陽性となること)が起こる頻度がPCR検査よりも高いためです。

入院時に行われることが多い検査として、胸部レントゲン、胸部CT、血液検査などがあります。

胸部レントゲンは主に肺炎があるのかどうかを確認するために行われ、より詳細な評価が必要と判断された場合は胸部CTも撮影されます。

病勢の強さ、肝臓や腎臓の機能、凝固異常などを確認するために血液検査も行われることがあります。

胸部レントゲンや血液検査は、状況に応じて適宜繰り返し行われます。一般に、重症度が高いほど検査が行われる頻度は高くなります。

どのような治療が行われる?

新型コロナの治療の考え方(doi:10.1016/j.healun.2020.03.012に筆者追記)
新型コロナの治療の考え方(doi:10.1016/j.healun.2020.03.012に筆者追記)

治療も重症度に応じて異なります。

軽症例では、原則として治療薬は使用されません(臨床研究や適応外使用という形で、処方が行われることがあります)。

また軽症の新型コロナに承認されている治療薬も国内ではまだありません。

これは軽症の人のほとんどが自然と治癒するためです。

自身で水分摂取も可能であれば、点滴も不要です。

また発熱や咳などの症状に応じて、解熱薬や咳止めなどが処方されます。

何も治療しないのであれば入院をする必要はないじゃないか、と思われるかもしれませんが、新型コロナでは発症してからしばらくは軽症であっても、発症後7〜10日以降に重症化することがあり、重症化リスクが高い人は病院で慎重に経過を観察することで適切に治療を開始することができます。

中等症では酸素の吸入を行います。

また、中等症以上ではレムデシビルやデキサメタゾン、抗凝固薬のヘパリンといった治療薬が使用されることがあります。

レムデシビルは点滴で投与されますので、静脈に血管内カテーテルを挿入します。

酸素を吸入しても体の中の酸素が保てない場合、さらに高濃度の酸素を体に送り込む必要が出てきます。

人工呼吸器を使用する前に、ネーザルハイフロー非侵襲性陽圧換気という方法を試みることがあります(感染対策の面から実施しないこともあります)。

それでも酸素が保てない場合、人工呼吸器が必要になります。

人工呼吸器から酸素を送り込むために、口から気管の中にチューブを挿入する処置(気管内挿管)を行います。

気管の中にチューブが入っている状態は非常に辛いため、人工呼吸器使用中は通常鎮静薬を使って眠ることになります。

人工呼吸器の使用に当たっては、主治医・患者・家族との十分な相談が必要です。

人工呼吸器を装着しても体の酸素が保てない場合にはECMO(体外式膜型人工肺)と呼ばれる装置を使うこともありますが、すべての患者さんに使用できるわけではなく、また使用できる医療機関も限られています。

入院生活での注意

入院中のお願い(いらすとや)
入院中のお願い(いらすとや)

入院生活では、感染を広げないために一部行動が制限されます。

原則として、病室内で過ごすことになり、シャワーを浴びるなど決まった時間以外は部屋から出ることができない施設が多いです。

咳がひどい場合は、医療従事者に感染させないようマスクの着用にご協力ください。

施設によって異なりますが、水などの生活必需品はスタッフが代わりに購入してくれることが多いです。

携帯電話は使用できる医療機関が多いですが、使用できる場所などが決まっていることがありますので、事前にスタッフに確認しましょう。

感染防止の観点から、面会も原則としてできません。

不便に感じることも多いと思いますが、感染管理にご協力をお願い致します。

どうなったら退院できる?

退院(いらすとや)
退院(いらすとや)

新型コロナの患者が人に感染させやすいのは発症3日前から発症後5日間とされています。

軽症・中等症では発症から10日経てば周囲の人に感染させることはなくなります。

現在の退院の条件は「発症から10日経過かつ症状軽快から72時間経過」となっており、最短で10日で退院できます。

「症状軽快」とは、一般的には発熱や呼吸苦などがなく、酸素も不要になった状態を指します。

退院後、いつから仕事や学校に戻れる?

職場の復帰(いらすとや)
職場の復帰(いらすとや)

退院後は人に感染させる状態ではなくなっていることから、特に就業制限などはありません。

ご自身の体調に問題がなければ仕事や学校に復帰することは可能です。

ただし、新型コロナでは退院した後もだるさ、息切れ、咳などの症状が長引くことがありすぐに元通りの体調には戻らないことも多いため、無理はしないようにしましょう。

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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