「投手交代しかやってない」タカ工藤監督、盤石の継投策

日本シリーズ4連覇を決め、万歳三唱するソフトバンクの工藤監督(中央右)ら=11月25日午後、福岡市のペイペイドーム(中井誠撮影)
日本シリーズ4連覇を決め、万歳三唱するソフトバンクの工藤監督(中央右)ら=11月25日午後、福岡市のペイペイドーム(中井誠撮影)

 V9巨人以外はなし得なかった日本シリーズ4連覇を、圧倒的な強さで果たした。25日のSMBC日本シリーズ2020第4戦で巨人を4-1で下し、日本一に輝いたソフトバンク。歓喜の輪の中で、工藤監督の背中がひときわ大きく見える。選手の個々の力、そして層の厚さを見せつけ、2年連続で巨人を4連勝で下しての日本一の栄冠。シーズン終盤の勝負どころで12連勝を飾った指揮官の采配は、短期決戦でさらにさえ渡った。

 「私は投手交代ぐらいしかやってない」。エース千賀からモイネロ、森とつないで5-1で快勝した第1戦の後、謙遜も込めてこう話したが、現役時代に名投手だった指揮官の真骨頂は投手交代にこそある。

 2015年の就任以来、日本シリーズとクライマックスシリーズでは六回終了時にリードしていれば全て勝利。継投の必勝パターンを崩さず、終盤の逆転を許さなかったからこそだ。今シリーズでも投手の交代期の見極めに心を砕いた。

 象徴したのが第2戦。7-2の六回1死一、二塁で左の丸を迎えた場面では、疲れが見え始めていた先発の石川に代え、変則左腕の嘉弥真を投入。空振り三振に切ってとるとすぐさま下手投げの高橋礼に切り替え、四球で満塁となったものの中島を空振り三振に仕留めて火消しに成功した。

 「1本の安打で雰囲気が変わるから、(流れを)切ることが大事。押さえるべきところはそこの一点だけ」。その言葉通り、第3戦でも七回まで無安打投球を続けたムーアを「疲れが見えてきていた。どうしても勝ちたかったので」と情を挟まず降板させ、八回から継投に。第4戦でも先発の和田が本調子でないとみるや、二回限りで交代させた。

 投手のマウンド上のしぐさや動きから限界を見極める観察眼で、試合の流れをコントロール。そこに「短期決戦の鬼」と称される名将の矜持がある。戦いを終え「素晴らしい戦いをしてくれた選手たちに感謝です」と安堵の表情を浮かべた。 (上阪正人)

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