中国安全保障レポート AIなど最先端技術に集中投資

 防衛省のシンクタンク、防衛研究所は13日、中国の安全保障に関する動向を分析した年次報告書「中国安全保障レポート2021」を公表した。中国は人工知能(AI)などの先端技術が将来の戦争の帰趨(きすう)を左右するとして、集中投資していると指摘。民間企業の先端技術を軍事分野に応用する「軍民融合」を進め、欧米諸国と摩擦を起こしていると批判し、日本側も警戒が必要だと訴えた。

 報告書のテーマは「新時代における中国の軍事戦略」。中国政府が2019年7月に公表した国防白書「新時代の中国国防」に基づき、中国人民解放軍がAIやビッグデータなどの最先端技術を積極的に導入していると指摘した。

 中国政府は最先端技術を獲得する上で「軍民融合」を重視しており、国有企業による海外企業の買収・子会社化や、高度な技術を持つ人材を招聘(しょうへい)する人材獲得政策「千人計画」などを通じ、技術水準の向上を図っているという。欧米諸国は対抗措置として、米国による輸出管理の厳格化など、対中貿易全体で規制強化を進めているとも強調した。

 一方、宇宙では363機の衛星を使い、陸海空軍の作戦を情報面で支援するシステムの運用だけでなく、他国の宇宙利用を妨害するため、衛星と地上管制施設の通信を妨げる電子妨害兵器の開発を進めていると批判した。

 こうした動きを受け、政府は日米同盟による抑止力と対処能力の向上に加え、安全保障の新領域で優勢な立場を確保するために防衛態勢を充実させる必要があると説いた。

 平成30年4月に尖閣諸島(沖縄県石垣市)北側の日本の防空識別圏で中国の無人機が飛行した際、航空自衛隊は戦闘機を緊急発進(スクランブル)させた。報告書は中国による新技術の活用が「現場の対応をより一層複雑にしている」とも指摘している。

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