菅内閣が推し進める政府のデジタル化。基本的な哲学のないデジタル化では失敗が目に見えている(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 少子高齢化と人口減少が進むわが国の社会の質を維持し、さらに発展させるためには、データの活用による効率的な社会運営が不可欠だ。一方で、データ活用のリスクにも対応した制度基盤の構築も早急に求められている。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、これまでの経済、社会のあり方は大きく変わろうとしている。

 その中で、日本が抱える課題をどのように解決していくべきか。データを活用した政策形成の手法を研究するNFI(Next Generation Fundamental Policy Research Institute、次世代基盤政策研究所)の専門家がこの国のあるべき未来図を論じる。今回は代表理事の森田朗氏による政府のデジタル化について(過去13回分はこちら)。

コロナで露見したデジタル化の周回遅れ

 コロナ対応でわが国のデジタル化の遅れが露呈した。これまで、IT政策の目標を「世界最先端のデジタル国家の実現」と銘打ってきたものの、その化けの皮が新型コロナウイルスによって剥がされてしまった。

 一気に先進国レベルに追いつくことはムリとしても、2周、3周と引き離された遅れを取り戻してほしい。担当の平井大臣はデジタルに強いだけに、大いに期待したいところである。そして、各省縦割りの省益主義、時代遅れの紙ベースの法治主義の発想をリセットしてほしい。

 感染リスクに怯えながら、マスクを買うためにドラッグストアの前で長時間並んだり、買い占めのため法外な値段でマスクを買わなければならなかったわが国と比べて、販売店の在庫量と国民各自の購入数を国が把握し、過不足なく全国民が入手できる仕組みをあっという間に作り上げたのは台湾だった。

 それに比べると、日本ではマイナンバー制度が特別定額給付金10万円の支給に役に立たなかった。また、接触確認アプリCOCOAは、どれだけ感染リスクが軽減されるか疑わしい。わが国のデジタル化のレベルの低さにあきれた人も多いと思う。