iPS視細胞、世界初の移植実施 神戸の病院

 人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って光を感じる「視細胞」のもとになる細胞を作り、「網膜色素変性症」という目の難病の患者に移植して治療する臨床研究の世界初となる手術を神戸市立神戸アイセンター病院が実施したことが15日、分かった。視力回復を目指す再生医療の核心となる治療法の確立が目標だ。

 iPS細胞を使った目の再生医療の臨床研究では、網膜に栄養を与える細胞や、レンズの働きをする角膜の移植が既に行われているが、目が感じた光を電気信号に変えることで視力の核心を担う視細胞の再生は初めて。

 網膜色素変性症は視野が狭くなり、視力低下や失明につながる進行性の病気。網膜の視細胞が徐々に死滅し、失われる。遺伝的要因で発症するとされ、根本的な治療法は確立されていない。国内患者数は約4万人で増加傾向にある。

 計画によると、対象は20歳以上でほぼ視力を失った重い患者。京都大が健康な人から作って備蓄しているiPS細胞を使い、視細胞のもとになる細胞を作製。直径約1ミリのシート状に加工して患部に移植し、正常な視細胞に成長させ、光を感じられるように改善を目指す。移植後、1年間にわたり安全性や有効性を確認する。

 計画を主導する同病院の高橋政代研究センター長は理化学研究所のプロジェクトリーダーだった平成26年、「加齢黄斑変性」という別の網膜の病気の患者に世界初の移植を実施した。

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