自動車業界は100年に一度という大変革時代にある。その中で、トラック・バス大手の日野自動車は「自動化」という商用車の大変化に挑んでいる。陣頭指揮をとるのは、子会社の日野から親会社のトヨタの役員に移籍した経歴をもつ下義生しもよしお社長だ。異色の経歴をもつ下氏に、立教大学ビジネススクールの田中道昭教授が聞いた――。

※本稿は、デジタルシフトタイムズの記事「自動車業界の新潮流「CASE」に日野自動車が仕掛ける大勝負。自動運転商用EVプラットフォームを通じて描くビジョンとは」を再編集したものです。

日野自動車 下義生社長/1959年生まれ。81年早稲田大学理工学部卒、日野自動車入社。海外企画部や北米事業部の部長を務め、2015年に専務役員。16年から1年間トヨタ自動車の常務役員に。17年6月から現職。
日野自動車 下義生社長/1959年生まれ。81年早稲田大学理工学部卒、日野自動車入社。海外企画部や北米事業部の部長を務め、2015年に専務役員。16年から1年間トヨタ自動車の常務役員に。17年6月から現職。

私たちは「CASE」へ積極的に取り組むべき使命がある

【田中】今、自動車業界は大変革時代に突入しており、トヨタをはじめ多くの企業がモビリティ企業へと変革しようとしています。その中での新潮流が、「CASE」(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)と呼ばれる技術革新です。

「CASE」が実現すればバスやタクシーの24時間運行といった「自動化」が普及すると考えられており、特に商用車から本格化すると言われています。そのなかで、私は日野自動車が国内で最も高い使命感と問題意識を持つ会社だと思っています。

【下】ありがとうございます。私が日野自動車に入ったのは、トラック・バスは社会インフラであり、社会の中で生かされる商品だと思っていたからです。ただし、地球温暖化・交通事故・労働力不足・過疎地域での公共交通不足といった社会課題は、個々のバス・トラックの改善では解決できません。「CASE」は商用車で先行すると考えられていますから、私たちが積極的に取り組むべき使命があると考えています。

上物と車台を切り離し、車台を自動運転のEVに

【田中】昨年の東京モーターショーで発表されたコンセプトモデル「フラットフォーマー」には衝撃を受けました。

コンセプトモデル「フラットフォーマー」
コンセプトモデル「フラットフォーマー」

【下】「フラットフォーマー」は、バスやトラックが容量も用途も「固定されたもの」であるという概念を変えます。様々な用途にご利用頂けるよう、物や空間を運ぶ上物と車台を切り離し、車台を自動運転のEVにしています。お客様が接する空間は、様々な価値提供をする場になりますが、それを支えるフレーム・車台は一つのもので対応しようと考えています。

それにより、移動しているバス同士で乗客が移動する、荷物を運ぶドローンが追いかけてきて走っているトラックに自動で荷物を積む、上物は自動販売車や美容室など様々な空間として利用できるというような世界の実現を目指しています。ラストワンマイルはより小さな「フラットフォーマー」がきて、ラスト30センチくらいのところまで運びます。さらにそれ自体が宅配ボックスになってもいいと思っています。