「中国版Waymo」の座を狙う、滴滴と百度 自動運転分野で頂上決戦へ

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中国ライドシェア最大手の「滴滴出行(Didi Chuxing)」(以下、滴滴)は2016年、自動運転部門を設立し、研究を開始した。一方、滴滴の張博CTOがかつて在籍した検索エンジン最大手の百度(バイドゥ)は、それに先立つ15年12月に自動運転事業部の設立を発表し、正式に自動運転分野に参入すると明らかにしていた。

滴滴はモビリティ分野で台頭した新興IT企業、一方の百度はアリババやテンセントと並ぶ古参IT大手だ。滴滴にとって、自動運転事業は自社の価値をさらに高めるための唯一の道だ。一方、百度にとっての自動運転は、2本目の成長曲線を描き、再び頂点を目指すための重要な事業になる。米グーグル系の自動運転開発企業「Waymo(ウェイモ)」の中国版の座をめぐり、2社は初の競争に臨むことになった。

資金とリソースの先行入手が勝負の鍵に

Waymoは今年3月、初の外部資金調達として22億5000万ドル(約2400億円)を確保したと発表した。資金調達前の評価額は1050億ドル(約11兆円)で、フォルクスワーゲン(VW)やダイムラー、ゼネラル・モーターズ(GM)などの時価総額を大きく超えていた。

Waymoおよびその他自動車メーカーの時価総額(今年8月19日現在、左からテスラ、トヨタ、Waymo、VW、ダイムラー、BMW、ホンダ、GM、フェラーリ、上海汽車集団、フォード)

Waymoは最強の技術と最高の評価額、最多の資金を保有しており、自動運転業界の風向計とされている。グーグルをライバル視する百度が、中国版「Waymo」をインキュベートするチャンスを見過ごすわけはなかった。

百度はIT業界のエリートを数多く輩出してきたが、それは結果的に自身の競争相手を生み出すことにつながった。自動運転分野では、滴滴の張CTO以外にも「文遠知行(WeRide.ai)」の韓旭CEOや「小馬智行(Pony.ai)」の彭軍CEOと楼天城CTO、「中智行(Allride.ai)」の王勁CEOなどが、いずれも百度に短期間在職していた。

しかし、百度が「短期戦略と長期戦略」や自動運転レベルの「L3とL4」の間で揺らぎ続けたことで、中心的な技術者の離職が相次いだ。成果を出すための大切な時期を逃した結果、時価総額は700億ドル(約7兆4000億円)から450億ドル(約4兆7000億円)を下回るまでに下落した。

百度は最終的に折衷的な現実路線を選んだことにより、今年第2四半期のAI事業は前年同期比2桁増の伸びを示したものの、新興企業各社との競争に直面する事態に陥っていた。中でも最も強力なライバルになったのが、企業価値で百度を超える滴滴だった。

百度の関係者によると、李彦宏CEOは以前、自ら日本に足を運びソフトバンクの支援を求めたが、ソフトバンクは百度を選ばなかったという。ところがその1年後、滴滴傘下の自動運転技術開発企業がソフトバンク・ビジョン・ファンドから5億ドル(約530億円)以上の資金を調達したのだ。

滴滴は運転者不要の自動運転を実現する必要に迫られている。自動運転の実現により、運転手が増えれば乗客の待ち時間が減り、乗客が増えれば空車率が減るという従来の相互関係を打ち破り、大規模化に向けた布陣を強化できるからだ。

自動運転業界の関係者は「自動運転を手掛ける各社は、いずれも車両数や技術レベル、開発スタッフの人数が不十分だ。百度は最も多くの資金を投入している」と指摘。百度は傘下の自動運転開発プラットフォーム「Apollo」が昨年11月時点で路上走行試験用のライセンス150枚を取得し、うち80枚は乗客を乗せた走行試験を許可されていることからも分かるように、業界で圧倒的トップに立っていると説明した。

百度は今年になり半年間でスマート交通事業関連の十数項目を受注した。全国の1000万元(約1億5000万円)規模のプロジェクト七つのうち四つを獲得している。今年4月に発表した「Apolloスマート交通白書」では、スマート情報管理やスマート公共交通を含む商業ソリューション9項目を公開している。さらに、李CEOは今年第2四半期の決算報告に関する電話会議で、自身がすでに複数の1億元(約15億円)クラスの契約に目を通したことを明らかにした。

滴滴は現在、運転者不要の制御システムの開発を独自に進めている。もしも将来的に世の中の全車両にApolloの技術が採用されれば運転手数と乗客数の相関関係が打破され、サービスコストが大幅に低減された結果、百度も独自の配車プラットフォームを設立してくる可能性は非常に高い。そうなれば、百度は傘下の地図サービス「百度地図(Baidu Map)」と提携することでネット配車予約サービスを展開するだろう。

滴滴の最大の価値は既存のユーザーだ。彼らは滴滴の自動運転サービスを利用する最初のユーザーになってくれるだろう。

人材と資金の面で、百度は明らかに一歩先んじている。しかし、滴滴の関係者は「滴滴の資金調達力に不安はない。資金さえあれば、人材に関する問題もなくなる」と述べている。

滴滴と百度。IT業界の新鋭と古参。一方は運営を得意とし、一方は技術に立脚する。一方は基礎を守り、一方は再び頂点を目指す。2社の決戦に注目だ。

(翻訳・田村広子)

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