将来のモビリティーの造り分け(すみ分け)を示したのが図1だ。これは2018年に整理したものだが、現在も変わらない。モビリティーはエンジン車か、ハイブリッド車(HEV)か、電気自動車(EV)か、といった択一的なものではなく、移動距離や燃料への対応、車両サイズ(コスト)、乗用あるいは商用という使われ方に応じたすみ分けが進む。
第2回:HEVに現実を見た中国、判断ミスで自縄自縛の欧州
第3回:EVの優位性はさらに薄れる、脱化石燃料とLCAの推進
第4回:次世代車はこう造り分ける 持続可能性がメーカーの存続条件
この中で、EVの「現実解」はまず短距離輸送(人、モノ)の超小型商用車(LSEV;Low Speed EV)であり、他は一部の高額な大型SUV(スポーツ多目的車)とショーファーカー(運転手が運転する高級車)となる。中国では既にEV登録車の50%をLSEVが占める。日本でもトヨタ自動車が超小型EVの2020年秋の導入に向けて動いている(図2)。それに合わせ、国土交通省は2020年9月1日に道路運送車両法施行規則を改正し、軽自動車よりも小さい規格で公道走行ができる超小型モビリティー(補助金20万円)の普及を後押しする。LSEVはシェアリングにも適しており、今後は先進国でも新興国でも展開が加速すると考える。
燃料電池車(FCV)は長距離の大型バスやトラックが主体で、高額な大型SUVやショーファーカーの一部も対象となる。日欧米中では既に大型FCトラックの開発が加速しており、トヨタ自動車からのシステム提供も進む。加えて、トヨタ自動車はFCVのショーファーカーを2020年内に導入することを発表済みだ(図3)。
乗用車が大半を占めるミドルレンジは、エンジン車とHEV、PHEVが主流となり、ごく一部の高級EVとFCVが中国NEV規制(新エネルギー車)や米国カリフォルニア州ZEV規制(無公害車)の対応車となる。併せて、燃料は従来の石油系燃料ではなく、カーボンニュートラル燃料であるバイオ燃料や、PTL燃料*1、カーボンフリー燃料である水素への転換対応が必須となる。
従来車の延長上のEVは、顧客ニーズ(航続距離と販売価格)やLCA(Life Cycle Assessment)*2の二酸化炭素(CO2)などを考慮すると、当面普及は難しい。補助金頼みだが、中国や米国では補助金を減額する方向だ。WtW*3のCO2を含めてEVがHEVと対等に戦うには、電池のエネルギー密度(kWh/kg)を現在の10倍以上に改善する必要がある。だが、それは次世代の全固体電池をもってしても厳しく、今後10~20年を要するだろう。