コロナ禍のストレスが拡散させる「過激思考」 不確かな情報に踊らせられる「確証バイアス」のわな

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車の中から掲げられた反ユダヤのプラカード。イスラエルの国旗を模し、ユダヤ教徒の装束をまといダビデの星をつけたネズミが描かれ、「本当の疫病」と書かれている=米オハイオ州在住のユダヤ人ジャーナリストのツイッター投稿より
車の中から掲げられた反ユダヤのプラカード。イスラエルの国旗を模し、ユダヤ教徒の装束をまといダビデの星をつけたネズミが描かれ、「本当の疫病」と書かれている=米オハイオ州在住のユダヤ人ジャーナリストのツイッター投稿より

 新型コロナウイルス問題の長期化に伴い、インターネット上の情報との適切な距離感が問われている。「巣ごもり」でネット利用が拡大するなか、過激派が勧誘などに悪用。視聴者自身がネット検索で思い込みを強化してしまうこともあり、過激思考の拡散が懸念されている。【大治朋子】

 今年3月、米連邦捜査局(FBI)は中西部ミズーリ州で、コロナ感染者を収容する病院に爆弾を投げ込もうとした36歳の男を逮捕した。男は人種差別や反政府の思想を持ち、イスラム教徒やユダヤ教徒の襲撃も計画していた。

 米国では今春から、東部ニューハンプシャー州など一部の州で、政府のコロナ対応に反発する極右組織「Boogaloo(ブーガルー)」らが武装して政府に抗議したり警官と衝突したりする事件が相次いでいる。

 映画の題名にちなんだブーガルーという組織名は近年、「内戦」「革命」などを意味する俗語としても使われる。フェイスブック(FB)などソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上で共鳴し合った白人至上主義者らで作る緩やかなネットワークで、FB社は6月、関連する220のアカウントを閉鎖した。

 背景にはコロナ禍で市民のストレスが高じ、すでにその人の中にある政治的イデオロギーや差別意識が極限化し顕在化している状況があるが、加えて環境要因として指摘されているのがオンライン利用の拡大だ。英調査会社「ムーンショットCVE」によると、3月30日から4月5日にかけてコロナにより10日以上の待機が求められた州では白人至上主義のサイト視聴時間はそれ以前に比べて平均21%も増加。10日未満の待機が求められた州は平均1%増だった。

 コロナ禍と過激化の関係性について調査する英バーミンガム大学のウィリアム・アビス博士が5月に発表した論文によると、SNSの情報が思考を過激化させるかどうかの因果関係を証明する論文は現状ではまだ少ない。だがSNSが過激化を促す要因の一つになることはさまざまな調査で指摘されている。

 またアビス博士は、コロナで学校…

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