転換するアメリカの対中政策
台湾をめぐって、米国と中国の対立が激化している。李登輝元総統の告別式に参列するため、米国務省のキース・クラック次官が9月17日、台湾を訪問すると、中国は戦闘機など18機を動員した演習を実施して威嚇した。台湾情勢はどう展開するのか。
国務次官の訪台は、8月のアレックス・アザー厚生長官の訪台に続いて、米政府として最高ランクの高官派遣だった。「自由と民主主義を共有する台湾を守る」というメッセージであるのは、明らかだ。台湾側は蔡英文総統が夕食会を主催して、次官を歓迎した。
中国に向けた米国の「サイン」は、これだけではない。
国務省のデビッド・スティルウェル次官補(東アジア・太平洋担当)は8月31日、ヘリテージ財団で講演し「我々は『1つの中国政策』を維持するが、中国の台湾に対する挑発を受けて、重要な政策調整を強いられている」と語った(https://www.ait.org.tw/remarks-by-david-r-stilwell-assistant-secretary-of-state-for-east-asian-and-pacific-affairs-at-the-heritage-foundation-virtual/)。
米国は1972年、当時のリチャード・ニクソン大統領が中国を訪問し、米中共同声明(上海コミュニケ)を発表して以来、一貫して「1つの中国政策」を堅持してきた。これは米中関係の基盤だったが、それを事実上「手直しせざるを得ない」というのである。
トランプ政権が中国との対決姿勢を強めてきたのは言うまでもないが、今回の国務次官補発言は米中関係の根幹とも言える部分の見直しに触れた点で、これまでの対立とはレベルが違う意味合いを持っている。一言で言えば、対中・台湾政策の根本的な修正を示唆したのだ。