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買い換えようかな? オウナーも羨む“B”の魅力とは──ボルボXC40 B5試乗記

ボルボのコンパクトSUV「XC40」に追加されたマイルドハイブリッド仕様の「B5」に小川フミオが試乗した。現在、XC40 T4を所有する彼の評価は?
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Hiromitsu Yasui

上質なスニーカーのようなSUV

XC40に新しいパワートレインを持つ「 B4」と「B5」が追加された。特徴はともに小型モーターを搭載するマイルド・ハイブリッドであること。私は「T4」のオウナーとしても、この新型車に興味しんしん。さっそく、 9月中旬に日本で試乗したところ、「買い替えもいいかな?」と、思うほどだった。

8月に日本でも販売開始されたB4とB5は、従来、XC40のラインナップに設定されていたガソリンエンジンのT4とT5に代わるもの。Tシリーズと同様、Bシリーズも、“4”と“5”の違いは出力だ。

【主要諸元(B5 AWD Rデザイン)】全長×全幅×全高:4425×1875×1660mm、ホイールベース2700mm、車両重量1670kg、乗車定員5名、エンジン1968cc直列4気筒DOHCターボ(250ps/5400〜5700rpm、350Nm/1800〜4800rpm)+モーター(10kW/40Nm)、トランスミッション8AT、駆動方式4WD、タイヤ235/50R19、価格589万円(OP含まず)。

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19インチのアルミホイールはRデザイン専用タイプ。

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インタークーラー付きターボチャージャー装着の1968cc直列4気筒ガソリンエンジンと、専用の48ボルトバッテリーで駆動されるモーターの組合せという基本は共通。B4は145kW(197ps)の最高出力と300Nmの最大トルク、B5は184kW(250ps)と350Nmだ。

日本でいまもっとも売れているボルボ車であるXC40シリーズの特徴のひとつは、それほど大きくないサイズ(全長4425mm、全幅1875mm)のボディの、適度な軽やかさだ。

B5の“B”は、バッテリーではなく、ブレーキ(回生システム付き)の頭文字であるという。

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ボルボでは「XC40は(製品ラインナップでその上に位置する)XC60のスケールダウン版ではない」と、明言する。彼らはおもしろい例を示す。靴が並んだ画像だ。

左側には、3足のドレスシューズが並ぶ。違いは足のサイズのみ。それが多くのSUVの考えかた、と、ボルボではする。右側は、ドレスシューズ、ややカジュアルなレザーシューズ、そしてスニーカーが並ぶ。それがボルボのSUV戦略なのだそうだ。

XC40はいってみればスニーカー。カジュアルないい雰囲気がセリングポイントで、軽やかさが追求されている。高級仕様を買っても、それはレザーシューズでなく、あくまでもスニーカーの世界観のなかで上質さが追求されるという。

フロントに搭載するエンジンは、1968cc直列4気筒DOHCターボ(250ps/5400〜5700rpm、350Nm/1800〜4800rpm)。

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小型バッテリーはラゲッジルームフロア下に搭載。

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不満を解消

今回のBシリーズは、XC40の軽快さを引き出すドライブフィールを持っている。XC40には8月に、プラグ・イン・ハイブリッドの「Recharge(リチャージ)T5」も追加され、いっぽう、Bシリーズは、小さなモーターと小さなバッテリーで、エンジントルクの積み増しをしている。

最小回転半径は5.7m。

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ステアリング・ホイールのパドルシフトは省かれた。

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ハイブリッドとしてはやや不足感があるように思えるかもしれない。でも実際には、想像以上に、結果がよく出ている。ボルボが「ISGM(インテグレーテッド・スタータージェネレーター・モジュール)」と呼ぶモーターの効果を実感するのは、発進時と、追い越し加速のときだ。ごく低回転域から、アクセルペダルを強く踏み込む必要がなく、すっと車体が前に出ていく。ハイブリッド車ならではのスムーズさがちゃんとある。

走行中にアクセルペダルを踏み込んだときも、モーターが動く。この機構のため、低負荷時の巡航では気筒休止システムが使えるようになったのもメリットだ。

WLTCモードは12.8km/L。

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実際にT5とB5の燃費をメーカー公表値で比較すると、T5 AWD R-Designが12.4km/Lであるのに対して、B5 AWD R-Designは12.8km/L。T5の燃費は「JC08」で、B5はより現実的、つまり数値はきびしく出る傾向の「WLTC」なので、実際の燃費の向上ぶんはもっと大きいはずだろう。

私はいまT4 AWDに乗っていて、気に入っている点は、全体のバランスのよさだ。エンジンはT5よりアンダーパワーであるものの、1400rpmで300Nmのトルクが出るので、力は充分。トルク特性はフラットで、アクセルペダルを踏み込んでいったときも、パワーの息つぎはなく、スムーズに加速していくのも気持ちがよい。

トランスミッションは8AT。

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もうひとつ、T4のよさは足まわりだ。スプリングはややソフトな設定で、ふわふわと動く。それでいて、コーナリング能力はかなり高く、ようするにバランスよく仕上がったクルマである。

もし、あえて不満点をあげるなら、発進がよりスムーズであるといいなぁ〜と、思っていた。1.6tもあるボディなので、さすがに、アクセルペダルをやや多めに踏み込む必要があるのはしようがないのかもしれない。そう思っていたやさきに、今回のモーター(スタータージェネレーター)付きモデルの登場。これに乗ると、XC40好きの満足度がほぼ100%になるはず。

B5がオススメ

B4とB5、どちらがいいか……XC40に興味を持っているひとには、悩ましい選択肢だろう。T4とT5はともにバランスよく仕上がっていた。ちがいはパワーだが、さきに触れたようにT4で不満を感じる場面はほとんどない。

今回は、私が勧めたいのは、B5。こちらは「B5 AWD R-Design」のモノグレードで、前輪駆動もないし、豪華仕様「Inscription」の設定もない。それらはB4にのみ設定される。

インテリア・デザインは従来とおなじである。

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このB5 AWD R-Designはかなりよい。ひとことでいうと、すべてがきれいに組み合わさっているモデルだ。エンジンは低回転域から高回転域までトルクを途切れさせず、ハンドルは正確で、ボディロールを抑えたサスペンションはフラットな姿勢を保ってくれる。100%回生可能というブレーキ・バイ・ワイヤシステムも導入された。自然な踏力だ。

電気モーターは、発進時と、途中で加速が必要になったときに作動。エンジントルクの積み増しをする。アクセルペダルの踏みこみを抑え、燃費に貢献する。その作動も自然だ。

シートカラー(チャコール)はRデザイン専用。

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オレンジのフロアカーペット&ドア内張りは2万6000円のオプション。

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モーターが動くぶん、エンジン回転は低く抑えられているうえ、発進加速もいいし、高速道路の巡航時は気筒休止システムも採用された。急な加速にもモーターが即座に対応してパワーを出してくれるからだ。

B4では、中間加速時に多めにアクセルペダルを踏み込むと、どんっと唐突にパワーが出る。1980年代のターボ車にみられた”ターボバン(ターボの爆発)”を思い出した。

チルトアップ機構付き電動パノラマ・ガラス・サンルーフは21万円のオプション。

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おもしろいのは、燃費だ。おなじAWD R-Designモデルで比較した場合、B4の燃費は12.5km/L。対するB5はさきにも触れたとおり12.8km/L(ともにWLTCモード)。市街地でも高速道路でも、B5が好燃費である。

理由はおそらく、ここで書いたパワートレインのキャラクターだろう。B4はエンジン回転数2500rpmあたりでトルクの落ち込みがあるので、そこでアクセルペダルを強く踏みがちになる。B5は太いトルクバンドに乗ったまま。コーナーの入り口などでアクセルペダルを緩めたあとも、強く踏み増す必要がないのだ。

ラゲッジルーム容量は通常時460リッター。

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リアシートのバックレストは40:60の分割可倒式。

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ラゲッジルームフロア下には便利な収納スペース付き。

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快適装備を充実

「ボルボ・カーは、全モデルを電動化させる最初のプレミアムブランドとなります」

ボルボは2017年より製品戦略についてこう謳ってきた。日本におけるXC40もこの戦略に基づいての変更というわけだ。ピュアICE(内燃機関)モデル(Tシリーズ)はこれでカタログから落とされた。

ちなみに、B5(とB4)の「R-Design」は、今回いくつかの変更がくわえられた。以下の装備が標準化された。

ステアリングホイール・ヒーター
リアシート・ヒーター
ウォッシャー一体型フロントワイパー(ヒーター機能付)
パワー テールゲート(ハンズフリー・オープニング/クロージング機能付)
ラゲッジプロテクションネット
harman/kardonプレミアムサウンド・オーディオシステム(サブウーファー付)
ワイヤレス・スマートフォン・チャージ

ハーマン/カードンのオーディオシステムは標準。

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ちなみに、パドルシフトは非装備になった。さらに、リアバンパー形状が変更され、デュアルテールパイプが非設定となったのも、Bシリーズからだ。

ちなみにB4の「モメンタム」では、インテリアカラーおよびマテリアルの変更、LEDヘッドライト(アクティブベンディング機能付)が標準装備された。そして、ボディカラーは 「クリスタルホワイトパール」「デニムブルーメタリック」「ぺブルグレーメタリック」が選べるようになっている。

またB4「インスクリプション」では、ウォッシャー一体型フロントワイパー(ヒーター機能付)、パワーテールゲート(ハンズフリー・オープニング/クロージング機能 付)、ラゲッジプロテクションネットが標準装備された。電動化に伴い、装備も充実しものになったのだ。

価格は、「B4モメンタム」479万円、「B4 AWDモメンタム」499万円、「B4 AWDインスクリプション」539万円、「B4 AWD R-Design」539万円、「B5 AWD R-Design」は589万円となる。

文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)