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美しさと居住性、どっちを選ぶ? 新型アウディQ3の悩ましい選択肢

アウディの新型SUV「Q3」に大谷達也が試乗した。新たに設定されたスポーツバックとの違いなどをリポートする。
アウディ AUDI Q3 Q3スポーツバック SUV クーペSUV ドイツ車
Hiromitsu Yasui
アウディ AUDI Q3 Q3スポーツバック SUV クーペSUV ドイツ車
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デザインと居住性の違い

フルモデルチェンジして2代目に生まれ変わったQ3には、典型的なSUVデザインをまとったモデル(今回の試乗車)と、クーペライクなスタイリングの「スポーツバック」の2タイプが設定されている。このうちスポーツバックの魅力については別立ての記事で紹介したが、果たして本命ともいえるSUVの仕上がりはどうなのか? ここではQ3のラインナップ全体を見渡し、各モデルの“お勧めポイント”を紹介したい。

まずはQ3 SUVについて。私はここで便宜的にQ3 SUVと書いたけれど、正式な車名にSUVの文字は見当たらず、単にQ3と呼べばSUVボディを指すと考えていただきたい。

【主要諸元(35 TDI クワトロSライン)】全長×全幅×全高:4495×1840×1610mm、ホイールベース2680mm、車両重量1700kg、乗車定員5名、エンジン1968cc直列4気筒DOHCディーゼルターボ(150ps/3500〜4000rpm、340Nm/1750〜3000rpm)、トランスミッション7AT、駆動方式4WD、タイヤ235/55R18、価格543万円。

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試乗車のホイールはオプションのプラスパッケージ(19万)に含まれる19インチだった。

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そのデザインはQ3スポーツバックとよく似ていて、ほかのブランドではありえないほどシャープなキャラクターラインが与えられたボディは実に前衛的で未来感が漂う。都市にぴったり似合うデザインといってもいいだろう。

一般的にいってSUVクーペに比べるとSUVのデザインはフォーマルで、どこか野暮ったいイメージがつきまとうが、新型Q3の場合はこのキャラクターラインに救われて野暮ったい印象が薄い。このまま“クラブ”(銀座のママがいるほうではなくDJが活躍するほう)に出かけても仲間にすんなりと受け入れてもらえそうだ。

試乗車のボディカラーはオプションのパルスオレンジ(8万円)。

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Q3に新たに設定されたスポーツバック。ボディサイズは全長×全幅×全高:4520×1840×1565mm。

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ボディ形状の違いは室内スペースにも影響を与える。通常、ルーフが後ろにいくに従って下降するクーペは後席のヘッドルーム、つまり頭上の空間がセダンに比べて少し狭い。

SUVについてもおなじことがいえて、一般的にいってSUVクーペに比べるとSUV(ややこしい!)のほうがリアのヘッドルームは余裕がある。では、Q3とQ3スポーツバックでどのくらい違うかといえば、Q3の後席に私が座ると頭上に拳ひとつ分のスペースが残るが、Q3スポーツバックではこれが拳半分になる。

メーターパネルはフルデジタル。スポーツバックとデザインはほぼおなじだ。

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試乗車のシート表皮は、オプションのプラスパッケージに含まれるパーシャルレザー。

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ただし、頭の上のスペースなんて、実際に視線を上に向けないとわからないから、普通に座っている限りは拳ひとつ分でも拳半分でも大きな違いはないだろう。もっとも、これは身長が私とおなじ171cmほどの人に限った話で、身長180cmの人を乗せたら、SUVはOKだけどSUVクーペだと頭が天上にぶつかるということになりそうだ。

私は、仕事柄よくこういう記事を書くが、じゃあ、自分がQ3とQ3スポーツバックのどちらかを買うとして、「Q3スポーツバックの場合、171cmまでしか乗れないからQ3にしよう」とは絶対にならないと思う。Q3スポーツバックが好きな人は、後席に腰掛けた大男に文句をいわれようとなんだろうと、きっとQ3スポーツバックを買うだろう。だから、ボディの違いに関していえば、あくまでもデザインの好みで選べばいいと思う。

リアシートはセンターアームレスト付き。

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リアシートにはスライド機構も備わる。

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ラゲッジルーム容量は530リッター。

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リアシートは40:20:40の分割可倒式。

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ガソリンとディーゼルを設定

いっぽうで、なかなか好みだけでは絞りきれないのがグレードのほうで、ひとことでいうとQ3のほうが選択肢は多い。これは主に、アドバンスドという充実した装備のグレードがQ3だけに設定されていることによる。おなじく装備が充実したグレードとしてはSラインがあるのだけれど、こちらはQ3とQ3スポーツバックのどちらでも選べる。

ちなみに、アドバンスドは上質志向でSラインはスポーツ志向という違いがあるものの、装備内容にほとんど差はない。スポーティなデザインのスポーツバックにアドバンスドがないのは、だから当然のことなのだ。

最小回転半径は5.4m。

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ディーゼルモデルのエンジンは1968cc直列4気筒DOHCディーゼルターボ(150ps/3500〜4000rpm、340Nm/1750〜3000rpm)。

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トランスミッションは7AT。

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最後に残る選択肢がエンジンで、Q3とQ3スポーツバックにはガソリン・エンジンとディーゼル・エンジンのそれぞれが設定されている。ちなみに、アウディにはクワトロという名のフルタイム4WDが用意されていて、その優れた性能には定評があるのだけれど、Q3もしくはQ3スポーツバックの場合、クワトロが選べるのはディーゼルだけとなる。反対にガソリンは前輪駆動のみ。つまり、エンジンを選ぶと自動的に駆動方式も決まってしまうのだ。

では、ガソリンとディーゼルでどんな違いがあるかといえば、これはもう、ごく当たり前の話でガソリンのほうが静かでスムーズでアクセルを踏み込んだときの回転の上がり方が素早いと説明できる。裏を返せばディーゼルはその反対なわけだが、最近のディーゼルの進化は目覚ましく、「ガソリンに比べれば、まあ、かすかに振動が多いし、回転の上昇の仕方がちょっと鈍いかな」と感じる程度。

ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)やハイビームアシストなどはオプションのアシスタンスパッケージ(12万円)に含まれる。

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ステアリング・ホイールはSライン専用デザイン。

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メーターにはナビゲーションマップも表示出来る。

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ちなみに、同行してくれた若いスタッフ氏は日ごろ日本製のSUVに乗っている。Q3のディーゼル・モデルに試乗してもらったところ、「いやぁ、僕は全然気にならないですね」と、語っていた。つまり、その程度の差でしかないのだ。むしろ、一般的にいってディーゼルは中低速域のトルクが太く、したがって市街地走行時にぐっとアクセルを踏み込んだときには、ガソリンより力強い加速を示してくれたりするのである。

燃費がいいのもディーゼルの特徴で、今回は実測できなかったけれど、カタログを見るとガソリンの14.2km/Lに対してディーゼルは15.4km/Lと記されている(いずれもWLTCモード)。これだけ見るとあまり差がないようにも思えるが、ハイオクガソリンの価格は軽油のざっと30%増しだから、おなじ距離を走ったときの燃料代はディーゼルのほうが4割ほど安い計算になる。長距離ドライブに出かける機会が多いドライバーにとって、この差は小さくないだろう。

好みで選べばよし!

今回は触れなかったが、Q3とQ3スポーツバックの間にハンドリングや乗り心地に関する違いは基本的にない。つまり、おなじグレードを買えばQ3でもQ3スポーツバックでも印象は変わらないと考えてもらえればいい。

では、Q3ないしQ3スポーツバックのどれを選べばいいのか。

まず、ボディは完全に好みで選べばいいだろう。スポーティなスポーツバックを所有したら、華麗で格好いいだろうなぁと思う。逆に、Cピラーが太くて直立しているQ3のほうが力強い。ちなみに、荷室容量はQ3でもQ3スポーツバックでも530リッターで同一である。

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エンジンは、あまり遠出をしないならフィーリングがよくて車両価格も安いガソリンがお勧め。いっぽうで、遠出をよくして燃料代が気になる人、そして雪国に住んでいたりウィンタースポーツに出かけたりする機会の多い人には、クワトロがもれなくついてくるディーゼルがお勧めだ。

最近、「アウディはライバルのジャーマン・プレミアム・ブランドに比べて値段が高い」という言葉をよく耳にするが、それはライバルと違ってアウディがエントリーモデルを設定していないからで、同程度の装備を持つグレード同士で比較すれば価格に大きな差はない。だから、巷の声に惑わされることなく、自分のセンスを信じてじっくりとクルマ選びを楽しむことをお勧めしたい。

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文・大谷達也 写真・安井宏充(Weekend.)