「イージス・アショア」導入断念の経緯
河野太郎防衛相は地対空迎撃システム「イージス・アショア」の導入を断念した経緯を発表した。それによると、配備を急いだことから、迎撃ミサイルの推進装置「ブースター」の安全な落下について、米国に裏付けを取ることなく候補地だった秋田、山口両県に説明した問題があったとした。
だが、拙速やミスはブースター落下の問題だけではない。イージス・アショアは安倍晋三首相がトランプ米大統領に米国製兵器の「爆買い」を迫られて応じた、いわゆる政治案件だ。国防上の必要性が横に置かれたことにより、防衛省・自衛隊に導入へ向けたモチベーションがなかったことが最大の問題ではないのか。
米軍がルーマニアに配備したイージス・アショア=米海軍第6艦隊公式Flickrより
毎年度、計上される防衛費は、陸・海・空の3自衛隊から上がった兵器購入要求を官僚組織の内局が取りまとめる仕組み。したがって兵器類の購入元は、いずれかの自衛隊となる。
ところが、イージス・アショアの導入費が最初に計上された2018年度防衛費について、基本設計費などの関連予算7億円の要求元は、異例なことに内局となった。
内局は背広組なので兵器を必要としない。それでも要求元となったのは、いずれの自衛隊からもイージス・アショアを購入したいとの要求がなかったにもかかわらず、政治案件なので防衛省として購入しなければならなかったことを示している。
なぜイージス・アショアが政治案件なのか、あらためて振り返ってみよう。