日本郵船など 水素の燃料電池船で共同事業
川重、東芝系などと連携
日本郵船や川崎重工業などは1日、水素を使う燃料電池で動く船の実用化に向けた共同事業を9月から始めると発表した。2024年中の実証実験開始を目指す。水素燃料を使った中型船舶の実証実験は国内初。水素が船の燃料として安全に実用できるか検証しつつ、水素の供給システムの確立を目指す。温暖化ガスを排出しない船の早期実用化につなげたい考えだ。
事業は25年2月末まで行う。ENEOSや東芝エネルギーシステムズ、日本海事協会(東京・千代田)も参加する。
全長25メートルほどの中型の観光船に、東芝エネルギーシステムズ製の燃料電池を複数搭載する。合計出力は約500キロワット相当。災害時には非常用電源として、船から陸上に電力を供給することも想定する。運航は日本郵船傘下で引き船業の新日本海洋社(横浜市)が担い、横浜で24年の実証実験を予定する。
国際海事機関(IMO)は50年までに世界の海運全体が排出する温暖化ガス排出量の総量を08年比で50%削減するという目標を決めている。海運各社は、水素のほかアンモニアやメタンなど、複数の代替燃料について同時並行で研究を進めており、今回の実験はその一環だ。
小型船舶から500トン未満の貨物船が全て燃料電池化した場合、年間約500万トンの温暖化ガスの削減が期待できるという。日本郵船グリーンビジネスグループの中村利グループ長は「30年ごろの実用化を目指し、観光船以外の貨物船などにも燃料電池を活用したい」と話した。