カッケー民謡 厳選 DJ2人組 NHKFMで異色番組

2020年8月21日 07時49分

スタジオでは佐藤雄彦(左)と斉藤匠はソーシャルディスタンスで収録している

 日本各地の埋もれた民謡を見つけてはクラブで披露しているDJ二人組「俚謡(りよう)山脈」が、NHKFMで「民謡沼めぐり」と銘打った異色番組のパーソナリティーを務めている。放送では、二人が収集したレコードやCDなどの貴重な音源から「カッケー(かっこいい)曲」を厳選して紹介。不定期の早朝番組にもかかわらず、愛好者や二人のファンが“俚謡沼”にハマッているという。
 七月中旬に行われた収録は「海外向けに作られたレコードの民謡」を特集。佐藤雄彦=写真(右)=と斉藤匠=同(左)=の「俚謡山脈」の二人は、千葉県の「麦打(むぎうち)唄」(一九四一年)、新潟県の「SADO OKESA=佐渡おけさ」(五九年)、東京都の「千束麦打ち唄」(八〇年、歌唱は米国人のデイビッド・ヒューズ)など、希少な楽曲をずらりそろえた。二人は「『和』や古い日本を伝えようとかお勉強とかの意図は全くない」と強調。かっこいいか楽しいか、選曲の妙はそれに尽きる。
 二人はクラブのイベントなどでアジアやアフリカの音楽を知るうち、これに匹敵する日本発の音楽を探し始め、民謡に行き着いた。しかし、客に披露するために整えられた「正調」作品ではなく、その土地の薫り漂う「土着の民謡=俚謡」の発掘にこだわる。それをクラブのDJブースで流すと、若い客は思い思いに踊りに興じる。収集した音源を基に監修した広島県の「弓神楽」(二〇一六年)=写真=、埼玉県の「境(さかい)石投げ踊り」(一七年)といったCDは欧米でもヒットしている。
 番組は昨秋スタート。二人のトークショーを聴いていた局関係者が白羽の矢を立てた。金曜午前五時二十分からという時間帯だが、須永高生チーフ・プロデューサーは「オーソドックスな民謡ファンが驚いている。二人は民謡を伝統芸能ではなく音楽の一ジャンルとしてとらえているから面白い」と明かす。二人も「メールばかりでなく、(高齢の愛好家から)はがきが寄せられる」と話す。年配の民謡ファンの心もしっかりとらえている。
 新型コロナウイルスの影響でDJができない日々が続く。収集した音源を再発掘する作業などをしながらCDを監修する準備もしている。「ぼくらも民謡がこんな楽しいとは思わなかった。新しい楽しみ方を番組から提案していきたい」と意欲を見せている。
 この時の収録は二十八日に放送予定。 (藤浪繁雄)

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