米、対イラン国連制裁の復活手続き開始 権限めぐり紛糾必至

 【ウィルミントン(デラウェア州)=上塚真由】ポンペオ米国務長官は20日、対イラン国連制裁の全面復活(スナップバック)を求める書類を国連安全保障理事会に提出し、手続きを開始したと発表した。米ニューヨークの国連本部で記者団に明らかにした。

 2015年のイラン核合意を承認した安保理決議に基づく手続きだが、安保理内では18年に離脱を宣言した米国には再発動を求める権限がないとの見解が有力で、対応をめぐり議論が紛糾することは必至だ。

 対イラン武器禁輸措置を延長する安保理決議案が今月14日に否決されたことを受け、トランプ大統領は国連制裁の再発動に向けて行動を起こすと明言していた。ポンペオ氏は20日、記者団に対し「米国は、テロ組織の主要なスポンサーであるイランが自由に武器を売買することを決して許さない」と述べ、制裁再発動が必要だと訴えた。

 イラン核合意を承認した安保理決議では、いずれかの核合意参加国がイランの合意違反を安保理に通知すると、事実上、30日後には核合意で解除された対イラン安保理制裁が全面的に再発動される。

 核合意参加国はいずれも米国に反発し、中露は「米国には権限がない」と主張しているほか、英仏独も20日に共同声明を出し「米国は18年に合意から離脱した。したがって(米国による)行動は支持できない」と指摘。イランの国連大使は20日に記者団に対し、米国を「子供のようにふるまい、国際社会でばかにされている」と揶(や)揄(ゆ)した。イラン問題をめぐり米国は安保理で孤立しており、制裁復活を主張しても各国が従わない事態も予想される。

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