敏感な海域で漁労厳禁 中国当局が尖閣沖で漁船の管理強化 16日に漁解禁

14日、中国福建省石獅の祥芝港で、氷の積み込みなど出漁準備に追われる船員ら(西見由章撮影)
14日、中国福建省石獅の祥芝港で、氷の積み込みなど出漁準備に追われる船員ら(西見由章撮影)

 【中国福建省石獅(せきし)=西見由章】中国海警局の公船が尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で挑発行為をエスカレートさせる中、中国側が尖閣周辺の東シナ海に設定した休漁期間が日本時間16日午後1時に明ける。出漁準備が本格化している中国福建省の漁港では、当局が尖閣沖での操業規制を継続している様子がうかがえたが、過去には大量の漁船が押し寄せたケースもあり、予断を許さない。

 港内に漁船数百隻が所狭しと並ぶ同省最大の漁港、祥芝(しょうし)港。3カ月半の休漁期間明けを控えた14、15両日、船員たちは魚を冷凍する氷や漁具の積み込み作業に追われていた。

 「釣魚島(尖閣諸島の中国側名称)には以前よく行ったが、今は(当局が)行かせない」。中型船で16日に出港するという50代の楊さんは、尖閣沖で操業する漁船に支払われていた補助金が、ここ数年は出なくなったと説明した。尖閣沖では「大型の魚が取れる」(楊さん)ものの、同港からは片道二十数時間かかり燃料費もかさむ。

 石獅に隣接する晋江(しんこう)市の深●(しんこ)港で出港作業を進めていた漁船の乗組員も「台湾海峡で操業する。釣魚島には行かない」と話した。

 2016年8月、中国当局は漁船約300隻と公船10隻以上を尖閣周辺に送り込み、日本に揺さぶりをかけた。ただ、その後は日中関係の改善基調に伴い、尖閣沖での操業規制を強めている。「敏感な海域に赴き漁労することを厳禁する」。祥芝港には真新しい横断幕が掲げられていた。

 祥芝港を抱える石獅市当局は7月、「敏感な海域」に無断で入った漁船を厳罰に処すとの通達を出した。各漁船に対し中国独自の衛星利用測位システム「北斗」などに常時接続することも要求、漁船団の行動を綿密に把握する構えだ。

 多くの漁業関係者は「敏感な海域」を台湾近海と認識しているが、実際は尖閣沖も含まれるもようだ。

 一方、漁船乗組員の言(げん)さん(55)は「釣魚島は中国のものだ。今年も一部の船は行く。(接近禁止の)規制線は決められているが、こっそり規制線を越える船もある」と明かした。

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