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わたしたちの「エア ジョーダン」物語──第3回 ラッパー、kZm 

バスケットボールがキッカケでヒップホップに出会ったユース世代のスターが語る「エア ジョーダン」の魅力とは。
わたしたちの「エア ジョーダン」物語──第3回 ラッパー、kZm

26歳にとってのジョーダン

引退から17年が経過した現在でも、色褪せることのないヒーロー、マイケル・ジョーダン。バスケットボールの神様への、それぞれのおもいを訊く連載、わたしたちの「エア ジョーダン」物語の第3回では、ヒップホップクルー・YENTOWN(イエンタウン)所属のラッパー、kZm(ケーズィーエム)が登場する。

今年4月にリリースした2ndアルバム『DISTORTION』は、ポップスが主流の日本において、見事「Apple Music」の総合チャート1位を獲得。また、盟友BIM(ビム)を迎えた1stアルバムを締めくくる楽曲“Dream Chaser”やミュージックビデオの公開から3カ月足らずでYouTubeにて160万回再生超えを突破した2ndアルバムを締めくくる楽曲“Teenage Vibe feat. Tohji”は、若者たちのアンセムとして広く認知されている。

そんなユース世代の代弁者kZmとヒップホップの出会いは、バスケットボールがきっかけだった。マイケル・ジョーダンの活躍を目の当たりにしていない26歳の彼とって、ジョーダンとは一体どのような存在なのだろうか。

出発地点は代々木のストリートコート

「今でもたまに行く代々木公園のバスケットボールコートは、米軍の人たちもよくプレイしにくる場所。彼らは自然とスピーカーをつけてヒップホップを流しながらバスケをするんですけど、俺はその“絵”に魅せられましたね」

kZmは、地元・渋谷の近くでバスケばかりしていた小・中学生のころの自分が、ラッパーの道に進むキッカケとなった出来事をこう振り返る。

「代々木のコートは同じ世代のやつらも多くて、なかには3XLのトミー(・ヒルフィガー)のポロシャツを着て、BMXに乗って遊びにくる奴とかもいましたね。そういう当時のイケてる仲間の集まりが、俺がかつて所属していたkiLLa(キラ)に繋がるんですけど」

約束をするわけでもなくコートに集まり、居合わせたメンバーでピックアップゲームをし、疲れたら解散。ある日、kZmがバスケ終わりの仲間たちに声をかけ、SoundCloudにあるインストを使い、そこに自分たちのラップをのせ、iPhoneのボイスメモに録音した。

「バスケして、ラップする。毎日がこれの繰り返しでしたね」

“スタイル”としてのジョーダン

kZmにとってのバスケのスターは、ジョーダンではなく、彼に代わって一時代を築いたアレン・アイバーソンだった。

「バスケをはじめたころの自分にとって、マイケル・ジョーダンはバスケではなく、ファッションのイメージが強かったです。当時は今と違って『エア ジョーダン』は普通に買えたので、粋がってストリートコートで『ジョーダン 1』を履いたりしてましたよ(笑)」

「私服でもジョーダンはマストアイテムのひとつ。今思うとダサいかもしれないけど、ジョーダンのスニーカーとキャップの色を合わせるのは、B-boyのルールで(笑)。この色のスニーカー買ったら、この色のキャップも買わないと、みたいな。あの時が一番、ファッションを楽しんでましたね。髪をラインアップにして、体にオールドスパイスを塗って、コテコテのスタイル。宇田川町の『GROW AROUND』とか、めちゃくちゃ通ってました」

また、kZmはストリートでジョーダンを履くさい、譲れないマイルールがあるという。

「今は一言にジョーダンのシューズと言ってもめちゃくちゃ種類がありますけど、個人的に1から34まで続く代表的なシリーズ以外は履きたくなくて。『スパイズイック』(スパイク・リーとのコラボモデル)とかは、しっくりこない。ジョーダン履く人なら同意してくれる人も多いんじゃないですかね?」

愛用するジョーダン

そんなkZmに今、もっとも履いているジョーダンを紹介してもらった。

「オフ-ホワイトの『ジョーダン 5』は、ナイキのライブに出演したときにいただいた一足です。『ジョーダン 5』は形が一番好きで、『ジョーダン 1』と同じぐらい主人公感があるのがいい。オフ-ホワイトのコラボモデルは、ずっと『ヴェイパーマックス』を愛用していたんですけど、履き潰しちゃったので、今はこいつがフロントマンですね」

一方、今でもバスケを続けるkZmは、オンコートでもジョーダンを履くことが少なくない。なかでも使用率が高いのは、『ジョーダン プロト 32.9』。『エア ジョーダン 33』の試作品という位置付けのモデルは、エッジの効いたデザインながら、“ファストフィット”というロックダウンシステムとソックスタイプのライニングで、抜群のフィット感を提供してくれる。

「バスケをするときは、ずっとナイキの『ハイパーダンク』を愛用していたんですけど、世代交代でこいつを履いてます。ファッション向けのシューズっぽいデザインとは裏腹に、履いたときの足のハマり具合が最高。しかも軽いので日本人にも合うし、プレイしやすいです」

ジョーダンは「自分のルーツを示すもの」

アルバム『DISTORTION』には、ジョーダンを示すさいにも使用される“G.O.A.T”(註)というタイトルの楽曲を収録。VERDYがロゴをデザインしたことでも知られる楽曲“But She Cries”では、「Feel Like Kobe」というリリックが登場する。kZmは、楽曲のなかで、ヒップホップの魅力を教えてくれたバスケットボールにときおり敬意を表している。

「俺がジョーダンを履くのは、スケーターがパレスを着て、ヴァンズを履くのと同じ。自分がどこから来た人間なのかを忘れないためで、それを示すものでもある」

そして、インタビューの最後に、アーティストとしての今後の展望を聞いてみた。

「こういう状況なので、考える時間が増えて、それは前向きに捉えてます。正直、これだけ大きく時代が変わると、車がどう、とか、女がどう、とか、そういう上辺だけのフレックス系はもういいかなって。最近は、60年代のヒッピームーブメントとかの気分。あれも既存の考え方へ対する一種のカウンターカルチャーだった。理解を深めながら当時と今を照らし合わせて、ハートに訴えかけるような3rdアルバムを制作したいと思っています」

「直近のプロジェクトでは、7月31日から3日間、仮想空間でヴァーチャルライブを実施します。コロナの影響でライブができなくなった矢先に、クリエイティヴ集団PARTYの皆さんに出会い、実現することができた特別なイベントです」

「専用アプリをダウンロードして、それぞれにアバターを作成してもらい、未だかつてない体験をしてもらえるライブになるはず。こんな時代だからこそ、リアルとは一味違う僕なりの新しい表現を、みんなに思いっきり楽しんでもらえたら嬉しいです」

註:Greatest of All Timeの略。「史上最高」という意味で、スポーツやヒップホップなどの世界で頻繁に使用される。

PROFILE
kZm 
1994年渋谷生まれ、渋谷育ち。HIP HOPクルー、YENTOWN所属のラッパー。NIKEの「エア・フォース 1」アンバサダーを務めるなど、ファッション・アイコンとしても注目を集める。今年4月には2ndアルバム『DISTORTION』をリリースした。

kZm "VIRTUAL DISTORTION" 開催概要
日時:7月31日(金)21:00〜22:00、8月1日(土)11:00〜12:00/14:00〜15:00/17:00〜18:00/21:00〜22:00、8月2日(日)11:00〜12:00/14:00〜15:00/17:00〜18:00/21:00〜22:00(※放送プログラムは各回同一となります。)
出演者:kZm/野田洋次郎/BIM/LEX/VERDY/YouthQuake/and more
主催:PARTY/and music
協力:and tokyo
協賛:NIKE
WEBサイト:https://kzm.varp.jp/
利用環境:iOS/Android
参加方法:専用アプリ「kZm LIVE VARP」をダウンロード

アプリダウンロード
iOS:https://apps.apple.com/jp/app/varp-kzm-virtual-distortion/id1518778588
Android:https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.prty.varp.kzm