2回に分けてお送りしている注目の後編では、今後の登場が期待される新たなニーズについて熱い討論が交わされた。その先に見えてきた、「6G」への期待とは──。
〈前編はこちらから〉
5G普及のリード役は?
西田:この対談の前編では、今秋の登場が予想される「5G対応のiPhone」によって、市場の半分までは5Gが普及するだろうという見解で一致をみました。問題は、残る半分のユーザーへの普及・浸透がどう進むか、でしたね。
そういう意味では、ビジネス面における利用のほうが可能性は高いし、「じっくり浸透していく」という意味でもふさわしい、というか、似つかわしいのかな、と感じています。
岡嶋:はい、カギを握るのは産業面ですよね。ドコモやauの売り文句を見ていても、本来はビジネスで売りたいんだろうな、というのを強く感じます。新著にも書かせていただきましたが、「ホールセール」、すなわち一括で企業に回線を卸売りして使ってもらう用途が伸びる。一般ユーザーに売るというよりは、企業に対して販売する部分が大きいと推測しています。
実際、「大量接続可能」や「低遅延」といった5Gに特徴的な要素は、個々のエンドユーザーに響くものではありません。ビジネス用途であれば、まだまだ開拓の余地がありますし、今はまさに、そこが掘り起こされている状況なのではないか、と思います。
西田:これまでは、「携帯電話の料金体系」であるがゆえに使えなかった用途もあるわけですよね。
たとえば、田んぼに数百個のセンサーを配置して、それぞれが通信でデータを送るといった使い方は、古典的な携帯電話型の料金体系、すなわち「1台あたり毎月いくら」では成立しづらい。データ通信量はごくごく少なく、スマホなどとは用途が異なる使い方だからです。でも、5Gと前後して利用が促進されている「ホールセール」のような産業向けの料金体系なら、そういう使い方も可能になる。
岡嶋:携帯電話事業者側の発想でいえば、新しい使い方を「企業側が考えてくれる」というのはとても大きいと思います。回線の使い方は従来、携帯電話事業者自身が考えなくてはならなかったのに、今回はドーンと企業に卸してしまうわけですから。
この新しい回線をどう活用するかは、エンドユーザーである企業が考える──この構図は、携帯電話事業者にとって、ものすごく大きな負担軽減になっていると思います。うまい売り方だな、と感心しているんですよ。
西田:携帯電話事業者は、自身がもつノウハウである「回線を安定的に提供する」こと、あるいは「安定的に運用する」ことといった部分に注力すればいい、ということになりますしね。
岡嶋:ええ。携帯電話事業者は自らのストロングポイントに注力し、最終ユーザーに近いところはまた別の企業が担当する、というのは真っ当なビジネスモデルなのかもしれません。
「発想の転換」をもたらす人たち
西田:そういう意味でも、インフラの使い方は変わっていきますね。
岡嶋:今までとは違う常識をもった人が使うことによって変わるんだと思うんです。
フィーチャーフォンとスマートフォンは、じつは回線の使い方が違っていたと考えています。フィーチャーフォンは携帯電話由来の技術で、ネットワークを「とにかく節約して使う」という志向でつくられていました。
一方のスマートフォンは、パソコン由来の技術でつくられていて、ネットワークも電力も「あるだけ使う」という考え方です。そこに乗っかってくるアプリケーションの考え方も性質も、やはりフィーチャーフォンとは違っていた。
西田:発想の転換は、思わぬところからもたらされる、と。