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 大手通信機器ベンダーの囲い込みを避け、オープン仕様に基づいて自由にさまざまなベンダーの機器を組み合わせられるようにする「Open RAN」。ここ数年「O-RAN」や「vRAN」という似たような用語が乱立し、分かりにくい側面があった。しかし、ここにきて業界内で用語の統一が進み、概念が整理されてきた。続々と発足する業界団体の役割を含めて、知っておきたいOpen RANの基礎知識をまとめた。

■まぎらわしいOpen RAN関連用語をすっきり整理

 まずは混同されやすい「Open RAN」と「O-RAN」、「vRAN」の違いを整理してみよう。Open RAN関連の新興ベンダーである米Mavenir(マベニア)と、既存大手ベンダーであるスウェーデンのEricsson(エリクソン)という好対照な2社の個別資料を基に用語の定義をまとめてみた。Open RANが通信業界全体の運動として機運が高まり始めた背景には、業界内で使われる用語が統一されてきた面も大きい。

「Open RAN」とは?

 マベニアによると「Open RAN」の定義は、「オープンインタフェース仕様に基づいて構築する、機能を分離したRAN(無線アクセスネットワーク)のこと。オープンインタフェースと標準仕様に基づいて、ベンダー中立なハードウエアとソフトウエアの技術を用いて実装できる」とする。エリクソンも「オープンな無線アクセスネットワークのアーキテクチャーを示す業界用語」とほぼ同様の定義をしている。

 つまり広義の意味のOpen RANとは、無線アクセスネットワークをオープン仕様に基づいて要素ごとに分離し、組み合わせて利用できるようにすることを指す。この定義に沿えばOpen RANとは、楽天のネットワークのように仮想化技術も活用できるものの、Open RANの定義を満たすための必要条件ではないといえる。

「O-RAN」とは?

 「O-RAN」の定義について、マベニアは「O-RAN Alliance、または同団体で策定された仕様を指す」、エリクソンは「O-RAN Allianceを指す」と説明する。これらによりO-RANとは、Open RANの中でも特に、後述する業界団体「O-RAN Alliance」の活動、もしくは同団体で策定された仕様を指すといえるだろう。

 以上から言葉がよく似たOpen RANとO-RANの違いは次のようになる。Open RANは一般的な概念を指す用語で、O-RANは特定の団体の活動や仕様を指す用語と区別できる。

O-RAN AllianceはOpen RAN仕様策定の中心
O-RAN AllianceはOpen RAN仕様策定の中心
(撮影:日経クロステック)

「vRAN」とは

 最後の「vRAN」について、マベニアは「無線アクセスネットワークに対して、汎用プロセッサーを用いた仮想化技術を活用することで、よりオープンで柔軟性が高い形で実装すること」とする。エリクソンは「5G(第5世代移動通信システム)はソフトウエア定義かつプログラマブル可能になっており、無線アクセスネットワークに柔軟性やシンプル性を追加すること」とする。

 つまりvRANとは、楽天のネットワークのように、特にソフトウエアや仮想化技術を用いた無線アクセスネットワーク(基地局)の取り組みを指す。Open RANそのものの定義とは異なるもものの、Open RANで基地局機能をオープンに分離できれば、部分部分でvRANを導入しやすくなる。vRANに対しては柔軟性とともに低コスト化への期待も高く、Open RANに興味を持つ通信事業者のほとんどが、vRAN導入も合わせて検討しているといわれる。