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 竹中工務店が建築分野での点群の活用領域を探っている。点群とは、XYZの3軸で座標の位置情報を表したデータの集まりのことだ。点群データを合成すると、建物の形などを点々の集合体で正確に描写できる。

 ここ数年で、点群データの収集に用いる3D(3次元)レーザースキャナーがだいぶ身近になった。土木では以前から測量に使われていたが、建築では何ができるのか。竹中工務店の技術研究所が試行錯誤を続けている。

 今回のデジタル活用(デジカツ)は、2019年に東京・六本木に完成した未来の家「EQ House」を例に、建築の点群活用を見ていく。EQ Houseはメルセデス・ベンツ日本(東京都品川区)と竹中工務店が建てた施設であり、竹中工務店はここで様々な実験を行っている。点群活用もその1つである。

 技術研究所先端技術部デジタル生産グループ研究主任の染谷俊介氏は、点群のメリットは「原寸であること。様々なデジタルデータの中で、点群は寸法が正確なのが最大の利点」と強調する。だから使い方によっては、建築の仕事を劇的に改善できると考えている。

技術研究所に所属する染谷俊介氏(左)から、点群活用の適用例を説明してもらう私。新型コロナによる外出自粛要請が解け、ようやく6月に直接話を聞ける機会を得た(写真:日経クロステック)
技術研究所に所属する染谷俊介氏(左)から、点群活用の適用例を説明してもらう私。新型コロナによる外出自粛要請が解け、ようやく6月に直接話を聞ける機会を得た(写真:日経クロステック)
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 一方で、3Dレーザースキャナーは1台が数百万円台と高価である。かつ、点群の計測作業やデータ処理に慣れた人が不足しており、委託サービスの料金も高い。染谷氏は「目的を明確にしてから点群を集めないと、デメリットの方が大きくなる」と説明する。

 染谷氏はEQ Houseでは、原寸データの恩恵を享受しやすい、2つの建築プロセスへの適用を考えた。1つは工事の進捗管理、もう1つは使用する鉄骨の工場での製品検査である。今回は前者を紹介し、後者は次回取り上げる予定だ。

工事現場で点群を収集する染谷氏(写真:竹中工務店)
工事現場で点群を収集する染谷氏(写真:竹中工務店)
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