2020.06.04

アメリカ黒人殺害事件…前代未聞の「抗議デモ」その深すぎる闇

ソーシャルディスタンスも関係なく…

ニューヨークでも大々的デモが勃発

全米に新型コロナよりも社会を揺るがす波が起こっている。アメリカのミネソタ州ミネアポリスで、白人警察官に膝で首を押さえつけられ黒人男性が死亡した事件を発端に、ほぼ全米で抗議デモが広がったのだ。ニューヨークでも抗議デモは広がり、いまや人々はソーシャルディスタンシング(約1.8mの対人距離の確保)も取らず、抗議デモに参加している。

お店の破壊、略奪はニューヨークをはじめ各都市でも勃発しているため、ここだけを抜き取った日本のメディアが多いが、本質は悪人がお店を壊して商品を盗んでいる話ではない。高級ブランド店や大型店の損失は保険でカバーされる話なので、むしろ本質からはずれてくる。問題はもっと根が深いのだ。

ニューヨーク・アストリアで行われた警官による黒人殺害のデモ参加者たちの集会 photo by Yasuhiro Tanabe
 

死亡事件があったミネアポリスから約2000km離れたニューヨークでも、土曜日から抗議デモが始まり、日曜日になると組織的な集会が各地で行われた。集会自体はすべて平和的に行われたが、警察の警備が手薄になったところに暴徒化した人や略奪する人が現れた。略奪者は今回の事件で抗議している人の1%にも満たないだろう。

だが、平和的なデモ参加者も略奪者も不満がたまっていることは間違いない。今回の発端は、警官が一般の黒人を殺害したことなので、現在警備に当たっている警官も下手にデモ隊に手を出せないことが拍車をかけている。警官が抗議デモ参加者の扱いを間違えるとさらに過激化する可能性があるからだ。

2017年のアメリカ国勢調査によると、アメリカに黒人は12.3%しかいない。白人は61.5%。南米系(ヒスパニック・ラティーノ)は17.6%なので、黒人よりむしろ南米系のほうが人口の割合が大きいことにもなる。だが元々、アメリカの黒人は奴隷船によってアフリカ大陸から連れてこられた人たちで、現在のアフリカ系アメリカ人と呼ばれている黒人たちは、99%が奴隷の末裔であり子孫だ。アメリカ南部を中心として住んでいた黒人たちは、時代とともに全米の都市部に移り住むようになった。

テキサス出身の黒人に話を聞くと「黒人にとってニューヨークのハーレムはサンクチュアリ(聖域)のようなところで、他の州では黒人が少ないので生きにくい」。実際、モンタナ州やアイダホ州で黒人の人口は現在1%にも満たない。

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